公募研究
我々は、本新学術領域で取り組んだ、「芳香族エステルの脱カルボニル型カップリング反応」の反応開発中、「触媒的エステルダンス反応」を発見した。すなわち、フェニル1-ナフトエートをPdX2/dcypt触媒、塩基存在下、トルエン中加熱を行うと、エステル基がC2位に転位したフェニル2-ナフトエートが優先的に得られることを見出した。パラジウム塩と塩基を検討することで、その位置選択性はC2位/C1位= 85:3まで向上した。作業仮説は次のように考えている。反応はPd/dcypt錯体のC-OPh結合への酸化的付加からはじまる。続く、C-H活性化による脱プロトン化/脱カルボニル化を経て生成した「Pd/ベンザイン中間体」から、より熱力学的に安定なフェニル2-ナフトエートへの異性化反応(プロトン化/カルボニル化)が進行したと考えた。反応条件を最適化し、各種芳香族アリールエステルを反応させた結果、30種類以上のアリールエステルが本反応に適用可能であり、触媒的エステルダンス反応が進行した生成物を選択的もしくは優先的に与えた。続いて得られた生成物に対して、これまで我々が開発を行った、脱カルボニル型変換反応を逐次的に行った。その結果、同一触媒にて様々な求核剤と反応し、転位―脱カルボニル化生成物を与えた。特に興味深い結果として、4位にフェニルエステルを有するピリジンに対して本反応を行うと、3位、2位とエステルが転移し、最後に脱カルボニル型エーテル形成により、ジアリールエーテルが得られた。現在より詳細な条件検討と、反応機構の解明を行っている。
1: 当初の計画以上に進展している
未だ基質の制限は大きいものの、当初の目的である、芳香族化合物のエステル転移反応を見出すことができた。既に反応条件を最適化し、各種芳香族アリールエステルを反応させた結果、30種類以上のアリールエステルが本反応に適用可能であり、これまで我々が開発を行った、脱カルボニル型変換反応との組み合わせにより、高難度な反応開発に成功している。従って、当初の計画以上に進展していると考えられる。
見出した触媒的エステル転位反応を飛躍的に発展させる。具体的には、1) 広範な基質でオルト位からメタ位に転位させる反応条件を精査2) 適切な触媒設計により、リレー式でベンザインを発生させパラ位選択的な反応へと展開3) 転位させたエステルに対して「脱カルボニル型カップリング反応」を含むエステル変換反応を開発4) 反応機構の解明に着手し、より効率的な触媒開発への指針の獲得の4点に注力して研究に取り組む
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (32件) (うち国際学会 11件、 招待講演 16件)
Org. Lett.
巻: 20 ページ: 1150-1153
10.1021/acs.orglett.8b00080
Chem. Lett.
巻: 47 ページ: 756-759
10.1246/cl.180226
J. Synth. Org. Chem. Jpn.
巻: 76 ページ: 300-314
10.5059/yukigoseikyokaishi.76.300
Chem Asian. J.
巻: 13 ページ: 2393-2396
10.1002/asia.201800478
巻: 20 ページ: 3132-3135
10.1021/acs.orglett.8b01233
Asian J. Org. Chem.
巻: 7 ページ: 1358-1361
10.1002/ajoc.201800207