研究領域 | ハイブリッド量子科学 |
研究課題/領域番号 |
18H04283
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野村 晋太郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90271527)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ハイブリッド量子コヒーレント制御 / ダイヤモンド窒素-空孔中心 |
研究実績の概要 |
本年度、ダイヤモンド表面に核スピン格子構造を形成した試料の作製を開始し、その量子コヒーレンスの基礎的評価を行った。高純度化学気相成長ダイヤモンドの表面に同位体分離した15N+イオンを注入し、表面から浅い面内に高い窒素―空孔(NV)センターを形成した。ダイヤモンドに対してフッ素化 表面処理を施した試料を作製し、その基礎的評価を行った。広視野光学顕微鏡を用いた局所磁場検出システムを発展させ、核スピン検出と制御のための高感度化をはかった。表面から浅い面内に高いNVセンターを有する試料を用い、フォトン・マイクロ波パルス照射下において光検出パルス電子スピン共鳴、ラビ振動、ラムゼー共鳴、ハーンエコー測定ためのシステムを確立し、アンサンブル量子スピンコヒーレント制御を行った。広視野光学顕微鏡を用いたイメージング測定系においてダイヤモンド中アンサンブルNV電子スピンの縦緩和時間T1、スピン緩和時間T2*、T2を評価に成功した。特筆すべき実績として、リソグラフィー法により作製した金属細線まわりの定量的マイクロ波強度のイメージングを得ることに成功した。NV中心電子系のコヒーレント振動であるラビ振動をピクセル毎に得、マイクロ波振幅がラビ振動数に比例することを利用して、マイクロ波強度イメージを定量的に計測することに成功した。非給電微小アンテナ周りにおいてマイクロ波が振幅で21.5倍、強度で462倍に増強されていることを観測した。nm幅の適切なパターンのデザインにより、量子スピン個別にマイクロ波を印加することが可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子スピン制御の忠実度を上げるためには量子スピン状態を180°反転させるためのマイクロ波パルス長を短くすることが鍵となる。本年度、高速sCMOSカメラを用いた広視野光学顕微鏡を用いたシステムによりイメージングを取得し、最大171 MHzのラビ振動数を得ることに成功した。これはマイクロ波πパルス長に換算すると3 nsに相当し、本年度高度化をはかった広視野光学顕微鏡を用いた局所磁場検出システムにより、今後の研究推進に十分な高い忠実度の量子スピン制御が可能であることを示す。ラムゼー共鳴他一連の測定によりダイヤモンドNV中心アンサンブルを用いた発光イメージングによる量子スピン読み取り手法の優れた特性が確かめられた。当初計画された研究項目はほぼ達成された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度高度化をはかった広視野光学顕微鏡を用いた局所磁場検出システムは、十分な高い忠実度の量子スピン制御が可能であることが示された。この成果を踏まえて、今後、フォトン、マイクロ波、RF帯高周波をCar-Purcell-Meiboom-Gill (CPMG)等のマルチパルスシーケンスにより照射して、光-NV電子スピン-核スピン格子からなる系のハイブリッド量子コヒーレント制御に関する研究を当初の計画通り実施する。私たちの開発した手法は、量子スピンの局所的な制御、マイクロ波デバイスやメタマテリアル素子の評価、誘電率の差を利用したマイクロ波バイオイメージング等のさまざまな方向への展開が期待される。領域内での共同研究を通じてハイブリッド量子コヒーレント制御の研究を推進する。
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