昨年度の成果を踏まえて、本年度は、フォトン、マイクロ波、RF帯高周波をパルスシーケンサにより照射して、光-NV電子スピン-核スピン格子からなる系のハイブリッド量子コヒーレント制御に関する研究を実施した。昨年度に高度化した局所磁場検出システムに、本年度に任意波形発生器を導入した。これはマイクロ波パルスの形状を自在に制御することを可能とする装置である。この装置の導入によって、CPMG法等のマルチパルスシーケンス、およびスピンロッキング法によるアンサンブルスピン制御系の開発とコヒーレンスの拡大に関する研究を行った。スピンロッキング法によりおよそ1ms以上へのコヒーレンス(T1ρ)の延長が示された。さらに、本年度に導入したマイクロ波発生器によりマイクロ波の範囲を10 GHzまで拡大し、これに伴い印加磁場の範囲も拡大された。以上のように、ダイヤモンドNV中心の量子スピン制御の高度化と高精度化が進められ、核スピン系の冷却と偏極制御に関する研究を実施した。 また、連携研究者の新潟大学佐々木進氏との共同研究により、マルチ量子ビットの候補物質としてフッ化カルシウム結晶中の19FのNMR法による研究を実施した。マルチπパルスを印加する手法により19Fのコヒーレンスの延長が示された。 昨年度に引き続き、リソグラフィー法により作製した金属細線まわりのマイクロ波強度のイメージングに関する研究を実施した。直線型、テーパード型、クロス型のマイクロ波共振器中の金属細線について、定量的マイクロ波イメージングとFDTD計算によりそれらのマイクロ波増強効果を明らかにした。
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