公募研究
局所的元素置換(結晶化学的格子歪)によるフォノンエンジニアリングを研究した。これまでの研究において、人工的なフォノンエンジニアリング手法として薄膜-基板界面の格子不整合により、特に臨界膜厚付近における傾斜格子歪(空間反転対称性の破れ)の効果を利用することで電気双極子を誘起し、交差相関性の増大化を図ってきた。今年度は、2次元系格子歪制御に加えて、3次元系制御を目指して部分的元素置換による局所格子歪制御とそれによるフォノン物性制御を目指した。イオン結合性が強く、異元素置換の許容度の大きな機能性酸化物においては、非平衡結晶成長により局所的に大きな格子歪を印加されることを期待できた。様々なイオン半径および電荷イオンを組み合わせることで、フォノンがソフト化し、格子不安定性を誘起することが想定された。具体的には、スピンと双極子が共存する物質系としてガーネット型酸化鉄(R3Fe5O12)において、希土類Rサイト(12面体サイト)およびFeサイト(8,4面体サイト)をイオン半径の異なる希土類(Lu-Dy)、元素(Co,Ni,Si等)で部分的に置換し、単結晶として入手可能な3種のガーネット結晶(Gd3Ga5O12:GGG、Substituted-GGG:SGGG、Y3All5O12:YAG)と組み合わせることで、0-4%の格子不整合による格子歪を導入した。また、放射光を用いた角度分解光電子分光によるスピン電子状態の直接評価を行った。高エネルギー加速器研究機構(KEK)にて放射光分光による電子状態解析により、磁性元素の化学状態や価電子帯のバンド構造・状態密度、並びに磁性元素の分布の不均一性を実験的に評価した。磁性半導体薄膜における軟X線分光法を用いて、磁性半導体の機能性に関わる磁性元素の化学状態、及び価電子帯における不純物バンドの位置や母体半導体との混成強度を実験的に評価した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に沿って実験・研究を進めており、順調に進展していると考えられるため。
今後は、非対称人工格子と傾角スピンおよびエレクトロマグノン誘起の研究を行う。具体的には、スピン・フォノン結合型マグノン(エレクトロマグノン)誘起、歪勾配誘起のエレクトロマグノン発現に挑戦する。鉄ガーネットR3Fe5O12 において、イオン半径の異なる3種類の鉄ガーネット(例えばR=La/Bi,Sm,Ho)を利用して、A 層:Ho3Fe5O12(ミスマッチ0%)、B 層:Sm3Fe5O12(+1%)、C 層:La3Fe5O12(+2%)を逐次積層した人工格子:A-B-C-A-B-C・・と積層した三色結晶(Tricolor crystal)-非対称人工格子を作製し、空間反転対称性を人工的に破る。また、A-B-C-C-B-C・・と、構成元素が共通で空間反転対称性を保持した対称人工格子との比較も行う。また、スピン・フォノン結合モードのフォトン(可視光・THz 波、マイクロ波)励起に関する研究を進める。具体的には、鉄系ガーネット結晶にCo-i 等の共添加することにより、室温における光誘導磁気効果(PME)に関する数多くの研究がなされてきた。フォトン(可視光)照射による電子励起では、価数ゆらぎ(IntervalenceCharge Transfer: IVCT)によって引き起こされる。Si 添加YIGの場合、Si4+ の電荷補償として生成された磁気異方性の高いFe2+イオンが、Si4+イオンの周りを囲んでいるが、光照射によってこのFe2+から電子がFe3+へと移動し、Fe2+の空間的位置が変位することが期待される。またCo-Si 共添加YIG は、550 nmの光照射によってCo2+ + Fe3+ → Co3+ + Fe2+というIVCT 形成が期待される。
すべて 2020 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (17件) (うち査読あり 15件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (100件) (うち国際学会 31件、 招待講演 18件) 備考 (1件)
Advanced Materials
巻: 30 ページ: 1906003(1-7)
10.1002/adma.201906003
IEEE Transactions on Electron Devices
巻: 67 ページ: 1880-1886
10.1109/TED.2020.2975582
Physical Review Research
巻: 2 ページ: 012014(1-6)
10.1103/PhysRevResearch.2.012014
AIP Advances
巻: 10 ページ: 015015(1-5)
10.1063/1.5130186
Applied Physics Express
巻: 12 ページ: 091003(1-5)
10.7567/1882-0786/ab37b1
Phys. Rev. Applied (Letter)
巻: 12 ページ: 041001(1-6)
10.1103/PhysRevApplied.12.041001
IEEE Journal of the Electron Devices Society
巻: 7 ページ: 1201-1208
10.1109/JEDS.2019.2933848
Proc. of 2019 Electron Devices Technology and Manufacturing Conference (EDTM)
巻: - ページ: 85-87
10.1109/EDTM.2019.8731302
J. Appl. Phys.
巻: 125 ページ: 195701(1-10)
10.1063/1.5088893
ACS Applied Nano Materials
巻: 2 ページ: 2806-2816
10.1021/acsanm.9b00293
巻: 9 ページ: 055001(1-11)
10.1063/1.5088890
Phys. Rev. Research
巻: 1 ページ: 033168(1-5)
10.1103/PhysRevResearch.1.033168
Proc. of 43rd IRMMW-THz
巻: - ページ: 758
電子情報通信学会技術研究報告: 信学技報
巻: 118 ページ: 11~16
APPLIED PHYSICS LETTERS
巻: 113 ページ: 012103(1-5)
10.1063/1.5034494
巻: 112 ページ: 162105(1-4)
10.1063/1.5020080
ACS Appl. Nano Materials
巻: 1 ページ: 1853-1862
10.1021/acsanm.8b00260
http://www.bioxide.t.u-tokyo.ac.jp/index.html