研究領域 | ハイブリッド量子科学 |
研究課題/領域番号 |
18H04292
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
井上 修一郎 日本大学, 理工学部, 教授 (30307798)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 量子ウォーク / 量子シミュレーター / 長距離伝搬型表面プラズモンポラリトン / 超伝導転移端センサ / 単一光子源 / SiC中のSi空孔 |
研究実績の概要 |
本年度は、長距離伝搬型表面プラズモンポラリトン導波路アレイの作製とSiC中のSi空孔からの単一光子発生を確認するための高分解能共焦点顕微鏡の開発を主に行った。 長距離伝搬型表面プラズモンポラリトンアレイに関しては、幅8μm厚さ20nm長さ3mmの導波路51本を2μm間隔で配列した導波路アレイを作製し、波長1550nmのレーザ光によって励起した長距離伝搬表面プラズモンポラリトンの伝搬特性を詳細に調べた。その結果、中央の導波路に励起した長距離伝搬型表面プラズモンポラリトンが順次両隣の導波路と結合しながら伝搬していく様子を観測することができた。また、FTDT法による計算機シミュレーションにより、作製した導波路アレイを長距離型表面プラズモンポラリトンが伝搬する様子の解析や長距離伝搬型表面プラズモンポラリトンの超伝導単位端センサによる直接検出を行うためのデバイス設計を行った。 一方、SiC中のSi空孔からの単一光子発生に関しては、高純度SiC基盤にプロトンを照射することによりSi空孔を作製し、その空孔からの発光を高分解能で観測するための共焦点顕微鏡を開発した。また、Si空孔からの発光が単一光子であることを確認するための2次相関測定を行うための光学系を構築した。 さらに、来年度予定している超伝導転移端センサの長距離伝搬型表面プラズモンポラリトン導波路への実装に向けて、導波路を窒素温度付近まで冷却し、低温環境下における長距離伝搬型表面プラズモンポラリトンの伝搬特性を調べた。その結果、低温環境下では長距離伝搬型表面プラズモンポラリトンの伝搬損失が改善されることを実証することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、長距離伝搬型表面プラズモンポラリトン導波路アレイの作製とSiC中のSi空孔からの単一光子発生が最終目的を達成するための要素技術となる。本年度は導波路数51本の導波路アレイの作製に成功し、SiC中のSi空孔からの単一光子発生を確認するための高分解能共焦点顕微鏡を作製した。これらの成果により来年度、長距離伝搬型表面プラズモンポラリトンの量子ウォークの観測やSiC中のSi空孔からの単一光子発生を観測できると考えられるため。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は以下の2つの項目について重点的に研究を進める。 (1)量子ウォークの観測 本年度作製した導波路数51本の導波路アレイを波長900nmのレーザ光で長距離伝搬型表面プラズモンポラリトンが励起できるように最適化する。次に、中央の導波路にレーザ光によって長距離伝搬型表面プラズモンポラリトンを励起し、導波路アレイ伝搬後の出力強度分布を測定する。その分散値を評価することにより長距離伝搬型表面プラズモンポラリトンの伝搬が量子ウォークであることを確認する。さらに、波長900nmにおいて量子もつれ光子対を発生させ、それらによって51本の導波路のいずれか2本の導波路に長距離伝搬型表面プラズモンポラリトンを励起する。導波路伝搬後の光子分布をEMCCDで測定することで2次元量子ウォークの観測を試みる。 (2)SiC中のSi空孔からの単一光子による単一表面プラズモンポラリトンの励起 本年度作製した高分解能共焦点顕微鏡と2次の相関測定系によりSiC中のSi空孔からの発光が単一光子であることを確認する。次に単一光子源であることが確認されたSi空孔についてそのSiC表面からの距離を測定し、プロトン照射量とSi空孔の発生位置との関係を詳細に調べる。この結果から、SiC表面にAuナノ構造体を作製することにより、Si空孔から発生した単一光子で単一表面プラズモンポラリトンを励起するための条件(プロトン照射線量やナノ構造体の形状)を明らかにする。
|