本年度は、平成30年度に作製した51本の長距離伝搬型表面プラズモンポラリトン(LR-SPP)導波路アレイを用いて LR-SPPの導波路アレイ伝搬特性を実験と計算機シミュレーションにより詳細に調べた。LR-SPPの励起には、波長 1550 nm、繰り返し周波数 10 GHz のパルスレーザを単一光子レベル(平均光子数 < 0.1)まで減衰させた微弱コヒーレントパルスを使用した。この微弱コヒーレントパルスを用いて end-fire 法により、中心の導波路に LR-SPP を励起し、導波路アレイの出力光子を正弦電圧ゲート動作 InGaAs/InP アバランシェフォトダイオード(SG-APD)による単一光子検出器で測定した。この単一光子検出器は、有効径 25 μm の光検出領域を有し、波長 1550 nm において光子検出効率 20 %、暗係数率は 2kHz である。この SG-APD を2 次元走査(raster scanning)することにより、量子ウォークに特有な非ガウス型光子検出確率分布を得た。また、素子長を変えた場合の出力光子検出確率分布の推移から 1 次元量子ウォークに特有な「弾道的」時間発展を確認することができた。次に、この出力光子確率分布を電磁界シミュレーション結果と比較した。電磁界シミュレーションは複素周波数領域有限差分(FDCFD) 法及び高速逆ラプラス変換(FILT)のコンビネーションである FDCFD-FILT 法を用いて行い、LR-SPP導波路アレイでのLR-SPP の量子ウォークをシミュレートすることに成功した。実験結果より抽出、規格化した確率分布と電磁界シミュレーション結果は良く一致しており、試作した LR-SPP 導波路アレイは 1 次元連続量子ウォークシミュレーターとして動作することを確認した。
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