公募研究
東北大学の大串氏から試料提供された BaMn2As2 単結晶の横波弾性定数C66をPPMSと超音波位相比較法を組み合わせて1.8 -300 K, 0-14 Tの温度・磁場領域で測定した。次にJ//[001]方向の外部電場(電流)印加の有無で弾性定数に変化が現れるかどうかを比較した。その結果、ジュール発熱から見積もられる変化量を上回る弾性定数の減少を観測した。しかしながら、現状の測定系では、試料と温度計の温度勾配から、試料のジュール発熱を正確に測定することができないため、理論的に予想されている磁気的圧電効果による音速変化と完全に結論するには至らなかった。そのため、本年度後半は磁気秩序点(TN = 625 K(325℃))をまたぐ高温測定系の開発に注力した。BaMn2As2以外の候補物質として、URu2Si2、DyB2C2、CeRh2Si2の電流下弾性定数測定を並行して行った。全ての物質について印加電流下における超音波測定を行ったが、今までのところ全ての物質で電流印加の有無による弾性定数の変化は観測されていない。特に、URu2Si2は東北大学 金属材料研究所 附属強磁場超伝導材料研究センターとの共同研究により、ハイブリッド磁石と希釈冷凍機を組み合わせて極低温(T ~70 mK)・強磁場下(H ≦ 28 T)における弾性定数C66の測定に初めて成功した。[100], [110]方向の磁場回転効果を調べたところ、常磁性相から異方性が現れた。一方、CeRh2Si2は、ドレスデン強磁場研究所との共同研究でパルス強磁場下(H ≦ 59 T)の超音波測定に成功し、縦波弾性定数C11、横波弾性定数C66においてT = 1.5-4.2 K, H ~26 Tで生じるメタ磁性転移とそれに伴う音響dHvA振動の変化を捉えることに成功した。
3: やや遅れている
上述の通り、室温行かの電流印加測定では、ジュール発熱に苦戦し明確な成果が得られていない。これを改善するため、BaMn2As2の磁気秩序温度(TN = 625 K(325℃))を跨ぐ高温測定を行う必要がある。しかしながら、高温測定系のテスト中に~300℃付近で同軸管の絶縁層として用いていたポリイミドが変性し、同軸管が爆発する事象に見舞われた。その修理と改善に時間を要し、計画に遅れが生じている。その解決策として、~785℃の歪点(軟化点)を持つパイレックスガラスを絶縁体に用いた同軸ケーブルを新たに開発した。その結果、誘電体(パイレックス管)と導体の内径・外径比を計算し、室温にて1 MHzから1 GHzの帯域で50±10 Ωのインピーダンス特性をもつ耐熱同軸管の開発に成功した。今後は、高温でのテストを経て、次年度に当初予定していた高温測定を遂行する。
BaMn2As2の電流下ならびに高温下における超音波測定の検証を継続する。初年度に研究が停滞したため、高温測定系の開発ならびにBaMn2As2の超音波測定自体がうまくいかない場合を想定し、研究計画立案時から想定していた下記の研究も並行して行う。電気磁気効果が磁化で報告されているを候補物質CeRh2Si2を含め、反転対称性を有せず、電気磁気効果が出現する可能性の有る化合物で超音波による電流効果を試す。富山県立大学の谷田氏よりCeCoSiの多結晶試料を提供してもらい、圧力下における奇パリティ多極子秩序相の超音波測定を行う予定である。「格子回転場」と「高次多極子」の結合の研究にも焦点を当てる。広島大の鬼丸氏からはTd対称性のかご状結晶構造にPrが内包されたPrIn2Zn20のY希釈極限系を提供してもらい、超音波を用いた「四極子近藤効果」の検証を行っている。URu2Si2、UBe13を東北大金属材料研究所の青木氏・清水氏から提供してもらい、強磁場・高温下の超音波測定を行う予定である。特にURu2Si2の高磁場測定に関しては、結晶軸に対する磁場方向の制御を確実にするため、次年度に二軸ゴニオメータを用いた追試を予定している。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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http://sonicbangs.sci.hokudai.ac.jp/yanagisawa/