3d電子系における奇パリティ磁気多極子秩序に由来する電気磁気応答と量子伝導現象

2019 年度 実績報告書

• 研究領域: J-Physics：多極子伝導系の物理
• 研究課題/領域番号: 18H04309
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 阿部 伸行 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (70582005)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2020-03-31
• キーワード: 電気磁気効果 / トロイダルモーメント / 磁気キラル二色性 / 磁気抵抗効果

研究実績の概要

本研究では奇パリティ磁気多極子に由来する新しい物性応答の発現を目指して、奇パリティ磁気多極子の電気磁気応答と、局所的な反転対称性の破れに伴う量子伝導現象のそれぞれについて重点的に研究を行った。まず奇パリティ磁気多極子の電気磁気応答として、反強磁性体であるMnTiO3における磁気キラル二色性の観測に成功した。磁気キラル二色性は入射光の偏光によらない光学応答であり、光の入射する向き、磁化や磁場の向き、そして物質のキラリティに依存して吸収係数が変化する現象である。これまでもキラルな錯体やマルチフェロイック物質などで報告されているが、今回我々は秩序型コランダム構造を持つ反強磁性体であるMnTiO3に着目した。この物質の結晶構造は反転対称性を持ち、しかも自発磁化を持たない反強磁性体であることから、これまで報告されてきた磁気キラル二色性を示す物質の条件を備えていない。しかし、磁性イオンであるMnサイトに着目すると、キラリティが異なる２つのサイトに反強磁性的にスピンが配列していることから、磁気秩序相ではトロイダルモーメントの強秩序状態になっている。実際に電気磁気効果を利用したドメイン制御と組み合わせることでトロイダルモーメントを単ドメイン化し、光吸収測定を行ったところ、磁気キラル二色性の観測に成功した。また、局所的な反転対象心の破れに伴う量子伝導現象として横磁場イジングモデルの候補物質の金属間化合物を合成し、磁場印加に伴う磁化と伝導性の変化を調べた。超伝導マグネットおよびパルスマグネットを用いた磁気抵抗測定によって、15テスラ以上の強磁場下ではスピンフロップ転移が生じることがわかった。

現在までの達成度 (段落)

令和元年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和元年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] Anomalous Lattice Softening Near a Quantum Critical Point in a Transverse Ising Magnet (2020)
  • 著者名/発表者名: Keisuke Matsuura, Pham Thanh Cong, Sergei Zherlitsyn, Joachim Wosnitza, Nobuyuki Abe, Taka-hisa Arima
  • 雑誌名: Physical Review Letters 巻: 124 ページ: 127205
  • DOI: 10.1103/PhysRevLett.124.127205
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Magnetically induced electric polarization in Ba3Fe2O5Cl2 with tunable direction in three dimensions (2020)
  • 著者名/発表者名: N. Abe, S. Shiozawa, K. Matsuura, H. Sagayama, A. Nakao, T. Ohhara, Y. Tokunaga, T. Arima
  • 雑誌名: Physical Review B 巻: 101 ページ: 180407
  • DOI: 10.1103/PhysRevB.101.180407
  • 査読あり
• [雑誌論文] Magnetochiral Dichroism in a Collinear Antiferromagnet with No Magnetization (2020)
  • 著者名/発表者名: Tatsuki Sato, Nobuyuki Abe, Shojiro Kimura, Yusuke Tokunaga, and Taka-hisa Arima
  • 雑誌名: Physical Review Letters 巻: 124 ページ: 217402
  • DOI: 10.1103/PhysRevLett.124.217402
  • 査読あり
• [雑誌論文] Nonreciprocal refraction of light in a magnetoelectric material (2019)
  • 著者名/発表者名: S. Toyoda, N. Abe, T. Arima
  • 雑誌名: Physical Review Letters 巻: 123 ページ: 77401
  • DOI: 10.1103/PhysRevLett.123.077401
  • 査読あり
• [雑誌論文] Room-Temperature Low-Field Colossal Magnetoresistance in Double-Perovskite Manganite (2019)
  • 著者名/発表者名: S. Yamada, N. Abe, H. Sagayama, K. Ogawa, T. Yamagami, and T. Arima
  • 雑誌名: Physical Review Letters 巻: 123 ページ: 126602
  • DOI: 10.1103/PhysRevLett.123.126602
  • 査読あり
• [雑誌論文] Enhanced magnetopiezoelectric effect at the Neel temperature in CaMn2Bi2 (2019)
  • 著者名/発表者名: Y. Shiomi, Y. Koike, N. Abe, H. Watanabe, T. Arima
  • 雑誌名: PHYSICAL REVIEW B 巻: 100 ページ: 54424
  • DOI: 10.1103/PhysRevB.100.054424
  • 査読あり
• [雑誌論文] Magnetic phase diagram enriched by chemical substitution in a noncentrosymmetric helimagnet (2019)
  • 著者名/発表者名: Tatsuki Sato, Yusuke Araki, Atsushi Miyake, Akiko Nakao, Nobuyuki Abe, Masashi Tokunaga, Shojiro Kimura, Yusuke Tokunaga, Taka-hisa Arima
  • 雑誌名: Physical Review B 巻: 101 ページ: 54414
  • DOI: 10.1103/PhysRevB.101.054414
  • 査読あり
• [雑誌論文] Out-of-plane electric polarization in double-fan magnetic phase of Y-type hexaferrite (2019)
  • 著者名/発表者名: Yuma Umimoto, Nobuyuki Abe, Shojiro Kimura, Yusuke Tokunaga, Taka-hisa Arima
  • 雑誌名: Physical Review B 巻: 101 ページ: 100403
  • DOI: 10.1103/PhysRevB.101.100403
  • 査読あり
• [学会発表] 吸収分光測定と誘電測定を用いたキラルらせん磁性体Ni2In1-xCrxSbO6の磁気構造の研究 (2020)
  • 著者名/発表者名: 佐藤樹, 阿部伸行, 木村尚次郎, 徳永祐介, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会第75回年次大会
• [学会発表] Ni部分置換によるCaBaCo4O7の磁気相制御 (2020)
  • 著者名/発表者名: 柳内晃, 近江毅志, 阿部伸行, 徳永祐介, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会第75回年次大会
• [学会発表] らせん磁性体CuB2O4における電気分極の温度・磁場依存性 (2020)
  • 著者名/発表者名: 尾亦恭輔, 阿部伸行, 徳永祐介, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会第75回年次大会
• [学会発表] イジング的反強磁性体TbPtInにおける横磁場効果 (2020)
  • 著者名/発表者名: 渡辺義人, 阿部伸行, 木村尚次郎, 三宅厚志, 徳永将史, 徳永祐介, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会第75回年次大会
• [学会発表] Mn3Cr2Ge3O12の磁気秩序由来強誘電性 (2020)
  • 著者名/発表者名: 西健太, 阿部伸行, 徳永祐介, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会第75回年次大会
• [学会発表] マルチフェロイックCo4Nb2O9におけるTHz光一方向伝搬現象 (2020)
  • 著者名/発表者名: 近江毅志, 阿部伸行, 德永祐介, S?ndor Bord?cs, Jakub VitA, D?niel Gergely Farkas, Sthephan Reschke, Istv?n K?zsm?rki, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会第75回年次大会
• [学会発表] 点群-42m絶縁体Na0.2Mn4.4(VO4)3の磁気異方性のCoイオン置換による変調 (2020)
  • 著者名/発表者名: 海本祐真, 阿部伸行, 徳永祐介, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会第75回年次大会
• [学会発表] Control of stability of Charge-Orbital Ordered State by using uniaxial stress in A-site ordered NdBaMn2O6 (2019)
  • 著者名/発表者名: Nobuyuki Abe, Takeaki Yoshizawa, Takashi Yamagami, Shigeki Yamada, Yusuke Tokunaga, Taka-hisa Arima
  • 学会等名: International Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2019
  • 国際学会
• [学会発表] Magneto optic study of thermally driven ferrimagnet helimagnet transition in a chiral polar magnet (2019)
  • 著者名/発表者名: Tatsuki Sato, Nobuyuki Abe, Shojiro Kimura, Yusuke Tokunaga, Taka-hisa Arima
  • 学会等名: International Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2019
  • 国際学会
• [学会発表] スキルミオンホスト物質GaV4Se8のGaサイト元素置換効果 (2019)
  • 著者名/発表者名: 藤間友理, 阿部伸行, 徳永祐介, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会2019年秋季大会
• [学会発表] マルチフェロイック物質MnWO4のスピン揺らぎII (2019)
  • 著者名/発表者名: 佐賀山基, 岡部博孝, 阿部伸行, 有馬孝尚, 平石雅俊, 幸田章宏, 石井祐太, 小嶋健児, 門野良典
  • 学会等名: 日本物理学会2019年秋季大会
• [学会発表] MnTiO3の吸収係数の電場・磁場によるスイッチング (2019)
  • 著者名/発表者名: 佐藤樹, 阿部伸行, 木村尚次郎, 徳永祐介, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会2019年秋季大会
• [学会発表] 極性キラル磁性体Ni2InSbO6におけるらせん磁気秩序の電場制御 (2019)
  • 著者名/発表者名: 荒木勇介, 中島多朗, 大石一城, 阿部伸行, 徳永祐介, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会2019年秋季大会
• [学会発表] 二重ペロブスカイト型Mn酸化物 NdBaMn2O6 絶縁体相の単結晶中性子散乱 (2019)
  • 著者名/発表者名: 山田重樹, 佐賀山基, 鬼柳亮嗣, 中尾朗子, 阿部伸行, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会2019年秋季大会
• [学会発表] ナトリウム添加バナジウム酸マンガンNa0.2Mn4.4(VO4)3軟磁石の単結晶育成および電気磁気結合の探索 (2019)
  • 著者名/発表者名: 海本祐真, 阿部伸行, 徳永祐介, 有馬孝尚
  • 学会等名: 日本物理学会2019年秋季大会