研究領域 | J-Physics:多極子伝導系の物理 |
研究課題/領域番号 |
18H04315
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
大原 繁男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60262953)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 局所的反転対称性の破れ / 反対称スピン軌道相互作用 / 電気磁気効果テンソル / 拡張多極子 |
研究実績の概要 |
局所的に反転対称性が破れた物質における電気磁気効果の研究を目的に、物質開発を行った。希土類元素がハニカム構造をもち、希土類元素のサイトに反転中心がない新物質として、R_4_Pd_9_Ga_24_(R=Tb, Dy, Er)の合成に成功した。またイッテルビウムの化合物の探査を行い、新物質としてYbNi_2_Si_3_、Yb_2_Rh_3_Si_5_、YbIr_3_Si_7_を得た。これらのうち、YbNi_2_Si_3_とYb_2_Rh_3_Si_5_はYbサイトに反転中心を持たない。 これらの新物質については、その基礎電子物性の測定を行った。YbIr_3_Si_7_については論文をとりまとめて投稿して審査中である。YbNi_2_Si_3_についてもとりまとめが終わり、投稿予定である。 本研究の主目的は新しい電気磁気効果の検証にある。これまでに合成に成功したハニカム構造をもつ希土類金属磁性体を用いて電気磁気効果の測定を進めた。最初の段階としてキラルな結晶構造を持つErNi_3_Ga_9_を用いて、電気磁気効果テンソルの各成分を測定することを試みた。結果、磁気秩序の生成による対称性の変化にともない、電気磁気効果が発現することの観測に至った。このとき、対象物質が金属であるため、電場効果を見るために電流を印加している。 研究の妨げとなっているのは電流によるジュール熱の影響であり、研究を発展させるには、その排除が必要とわかった。試料に対する熱浴の設置、試料形状の調整、端子材料と端子付け方法の改善を進めて、測定の手法の確立を目指した。その結果、ある程度の測定が可能となったが、技術として安定しておらず、改善が求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
局所的に反転対称性の破れた物質合成については計画通りに研究を推進できている。イッテルビウム化合物を狙いとした新物質探査では3物質の合成にいたり、その基礎的な電子物性を明らかとできた。これらの成果については口頭発表するとともに論文への取りまとめを進めている。一方、電気磁気効果の測定については、ジュール熱の影響の排除する測定方法の模索にとどまっており、計画からの遅れが生じた。研究の主目的であるので、測定環境を整えて測定を軌道に乗せる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である局所的に反転対称性の破れた系における電気磁気効果測定を本格的に推進する。試料はカイラル構造をもつErNi_3_Ga_9_およびその派生物であり、結晶構造全体としてはアキラルなEr_2_Rh_3_Ga_9_、Er_2_Pt_6_Ga_15_、Er_4_Pd_3_Ga_24_を用いる。これまでジュール熱の影響を排除できないことが研究の推進を妨げているが改善を重ねて、測定が可能となりつつある。今年度も引続き、反転対称性の破れにともなう電気磁気効果の発現を捉えるために測定を重ねる。必要に応じて、所属機関よりも測定環境の整っている学外の機関での測定を行い、成果につなげる。
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