研究領域 | J-Physics:多極子伝導系の物理 |
研究課題/領域番号 |
18H04317
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
関山 明 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40294160)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光電子分光 / 軌道対称性 / 放射光 / 多極子 / 偏光二色性 / 放射光 |
研究実績の概要 |
強相関希土類化合物において、結晶場分裂によって生じ局在多極子の起源となりうる異方的4f電荷分布=軌道対称性の直接的な決定は実験的に従来困難だったところ、我々は内殻”角度分解”光電子線二色性から直接的な決定が可能であることを発見した。本研究ではこれまでの研究を加速させ、当該年度には四極子秩序を示すDyB2C2の光電子線二色性の温度変化測定に成功した。ここで、磁場などを印加しない状態においては四極子秩序転移による光電子線二色性の変化は観測できなかった一方で、より高温側では50 K以上の100 Kで初めて温度変化を観測した。これは第一励起状態が100 K程度のオーダーにあることを示している。また、実験が先行していたところ、内殻光電子線二色性を定式化し、さらに群論的考察およびスペクトル理論計算を通じて、より対称性の高い立方対称下においてはd内殻励起光電子の観測が必須でありp内殻励起光電子では線二色性が生じないことを明らかにした。 圧力誘起超伝導体でありこれまで多くの研究が進められているCeCu2Ge2についても光電子線二色性の測定に成功し、解析の結果Jz = ±3/2とJz = ±5/2がほぼ同程度寄与しGeサイトに電荷分布の伸びたΣ-type Γ7対称性にあることを明らかにし論文発表した。さらにはこれと同じ結晶構造を取るも常圧では量子臨界的な振る舞いをみせず混成の強い価数揺動状態にあると考えられるYbNi2Ge2については、上記とは異なり遷移金属サイトに電荷分布の伸びたΠ-type Γ7対称性にあることを発見した。 Pr化合物については、計画研究班との共同研究によってPrBe13がΓ1対称性をもつことを実証した。これで、立方晶Pr化合物では昨年度までに得られたPrIr2Zn20、PrB6の成果と合わせて実際に取りうるすべての対称性に対応した線二色性の観測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ce, Pr, Yb化合物で光電子線二色性による軌道対称性決定がかなり進んできたこと、およびDyB2C2の温度変化測定に成功し申請時の大きな目的である温度変化測定を実現しつつある状況は予想どおり順調に進んだと言える。また、まだ再現性の点で若干不安はあるもののPrB6の磁場中光電子分光による反強磁性転移前後の温度変化測定にも着手しつつある。さらには光電子線二色性を定式化できたことで、原理的にはこの現象が一部元素によらず観測しうることを明らかにした。以上の点から本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
Pr化合物については本命ともいえるPrスクッテイルダイトの温度変化による相転移前後の線二色性変化観測準備が整ったといえるので今後積極的に測定を進めていく。またSm化合物においてはSmCu2Si2について測定が完了し論文化を進めていくが、合わせてSmPt2Si2の測定に着手し、これも相転移前後の線二色性変化を捉える。これらについては今後の若手研究者育成も見据え、研究協力者である博士後期課程大学院生(学振DC2採択)の浜本の協力も得ながら進めていく。さらには測定効率向上をはかるため、ダイヤモンド位相子を真空中で行えるよう実験環境の改善も進め、データのスループット向上にむけても尽力する。
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備考 |
研究協力者である博士後期課程大学院生が学振DC2に採択内定
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