公募研究
多極子相互作用が起源と考えられる異常な超伝導や磁性を示す新物質が発見され注目されている。これらの異常現象には磁性イオンが持つ多極子と伝導電子の相互作用が重要な役割を果たしていると考えられており、個々の物質のフェルミ面や状態密度などの電子状態の特異性が深く関与している可能性が非常に高い。そこで本研究では、これらの物質の高品質単結晶化を行い、ドハース・ファンアルフェン(dHvA)効果等の量子振動測定からその電子状態を観測することを目的とした。本研究期間内に行った主な研究内容は以下の通りである。(1)SmTi2Al20は約6.5 Kで非自明な相転移を示し、150 mJ/K2molにも及ぶ大きな電子比熱係数が磁場に対してほとんど変化しないことから磁場に鈍感な重い電子系として注目されている。本研究ではSmTi2Al20の純良単結晶育成を行い、dHvA効果測定からフェルミ面を観測した。フェルミ面の形状は比較物質のLaTi2Al20に類似していることから、Smの4f電子は基本的には局在していると考えられるが、観測されたサイクロトロン有効質量は0.9~5.6m0(m0は真空中での電子の静止質量)とLaTi2Al20と比べ 5~15倍重くなっていることが明らかとなった。(2)価数揺動物質CeIr2は電子比熱係数が 20 mJ/K2mol と比較的大きく,0.21 K で超伝導を示すことから4f電子の超伝導への寄与に興味が持たれている.また,高い量子効率を持つ電子銃の陰極材料としても注目されている。本研究では CeIr2の純良単結晶育成に成功し、dHvA効果測定から初めてそのフェルミ面を観測した。また、比較物質のLaIr2についても同様にフェルミ面の観測に初めて成功し、それらの比較から、CeIr2のフェルミ面の形状はLaIr2とは異なることが明らかとなった。
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すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 12件)
JPS Conf. Proc.
巻: 29 ページ: 012012/1-6
https://doi.org/10.7566/JPSCP.29.012012
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Physical Review Letters
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https://doi.org/10.7566/JPSCP.30.011130