公募研究
非共型空間群に属する物質またはジグザグ構造を有する物質における、その対称性に起因した特異物性の解明及び新規開拓を行った。まず金属絶縁体転移を示すRuAsにおいて200Kでの転移で核磁気緩和率に見られる発散が磁気的起源か電気的起源か区別が出来ていなかったが、μSR測定の結果から電気的起源と思われる結果を得た。また、Rhドープの効果を核四重極共鳴(NQR)によって調べた。Rhドープと共にその揺らぎは抑制され、超伝導が出現する領域では揺らぎが顕著でない通常の金属状態になっていることを明らかにした。また、そこで起きている超伝導は従来型のものであることを確認した。類似物質の探索としていくつかの試料の作製、圧力効果などを調査した結果、NbCrPで1次の相転移が150K付近で起きることを明らかにした。核磁気共鳴(NMR)の結果から非磁性の相転移であることが確認され、今後、その原因を追究する予定である。ジグザグ構造を有する強磁性超伝導体UGe2では圧力下の核スピン-スピン緩和時間の測定から、二つの強磁性相の境界で磁気モーメントの縦揺らぎが発達していることを示すデータを得た。今後、より詳細な圧力依存性を調べ、超伝導との関連性を明らかにする予定である。同じU系強磁性体としてU3Pt4の単結晶試料を得ることに成功し、その圧力効果を調べた結果、強磁性量子臨界点近傍の物質であることが分かった。また、新規物性探索としていくつかの物質の単結晶化に成功しており、より詳細な物性測定を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
金属絶縁体転移を示すRuAsにおいてRhドープの効果を核四重極共鳴(NQR)によって調べた。RuAsの200Kでの転移ではNQRの結果から電気的起源と思われる揺らぎの発散が観測されるが、Rhドープと共にその揺らぎは抑制され、超伝導が出現する領域では揺らぎが顕著でない通常の金属状態になっていることを明らかにした。また、そこで起きている超伝導は従来型のものであることを確認した。類似物質の探索として同型構造や同じ空間群の物質の作製、圧力効果などを調査した結果、NbCrPで1次の相転移が150K付近で起きることを明らかにした。核磁気共鳴(NMR)の結果から高温相では磁気相関があるが、非磁性の相転移が起きていることを明らかにした。ジグザグ構造を有する強磁性超伝導体UGe2ではNMR測定を行ったが、3サイトあるGeサイトのうち分離が容易なGe2サイトに注目して測定を行った。核スピン-スピン緩和時間の測定から、二つの強磁性相の境界で磁気モーメントの縦揺らぎが発達していることを示すデータを得た。同じU系強磁性体としてU3Pt4の単結晶試料を得ることに成功し、その圧力効果を調べた結果、強磁性量子臨界点近傍の物質であることが分かった。また、新規物性探索としていくつかの物質の単結晶化に成功した。
RuAsに関してはPドープ試料のNMR測定から金属-絶縁体転移に寄与している自由度の同定を行う。Pは磁気的相互作用しか持たないため、その区別が可能である。また、Ru-NQR測定からRuの4d電子の電子状態の解明を目指す。新たに相転移を発見したNbCrPに関しては圧力効果や低温の結晶構造の同定を進め、相転移の原因の解明などを目指す予定である。UGe2に関しては現在の測定を継続し、磁気ゆらぎと強磁性超伝導の関連を明らかにする予定である。また、今後は超伝導状態のNMR測定にも移行し、二つの強磁性相における超伝導性の違いを明らかにすることを計画している。U3Pt4に関しては試料の純良化を行いながら、強磁性量子臨界点の詳細を明らかにするとともに超伝導探索を行う。また非共型空間群に属する圧力誘起超伝導体CrAsの希釈冷凍機温度での圧力下NQR/NMR測定の準備がおおそよ整ったので、今後超伝導対称性の議論を可能とするデータの取得を目指す。また、いくつかの非共型空間群物質の単結晶にも成功しており、今後は精密な物性測定や圧力効果を通して新奇相の発見を目指す。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件)
Physical Review B
巻: 99 ページ: 125126-1-6
10.1103/PhysRevB.99.125126
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 87 ページ: 073703-1-5
10.7566/JPSJ.87.073703