研究実績の概要 |
我々が発見したCe3TiBi5は局所的な空間反転対称性を持たないCeジグザグ鎖構造を有し、Ceの比較的局在性の強いf電子が反強磁性秩序を示す。拡張多極子による分類では、Ce3TiBi5の秩序状態は強トロイダル秩序状態に分類され、電気磁気効果による電流誘起磁化が期待できる。Ce3TiBi5において電流誘起磁化の探索を行った。 我々はカンタムデザイン社の磁束計MPMSを利用して予想された電流誘起磁化の観測に成功した。試料依存性や再現性、測定システムにエラーがないことを確認した。Ce3TiBi5における電流誘起磁化現象の特徴として、1「電流の変化に対して線形的に増加する。」、2「電流誘起磁化成分は磁場に依存せず、ゼロ磁場においてもその成分は存在する。」が観測され、理論研究による指摘と一致した。しかしながら、現実の系としては反強磁性状態にドメイン構造が存在すると考えられる。ドメイン構造がランダムに発生していると考えると、トータルの強トロイダル成分は相殺し、電流誘起磁化も発生しないと考えられる。また、イントラチェーン内では強トロイダル秩序状態を形成するが、インターチェーン間では120度構造を形成するとも考えられ、いくつかの問題点が残っている。 ホール素子による電気磁気効果測定システムの開発に関して、直流測定では困難であることが判明してきており、交流測定に切り替えて開発を進めている。 新たな物質探索にも取り組んでおり、Ce3TiBi5と同型の化合物Ce3ZrBi5およびRE3TiBi5(RE=La,Pr,Nd,Sm,Gd)の単結晶育成にも成功し、構造パラメータの決定を行った。
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