公募研究
キラルな結晶構造をもつYbNi3Al9はRKKY相互作用とDzyaloshinskii-Moriya(DM)相互作用の競合によりTM = 3.4 K以下でキラルらせん磁気秩序(CHM)を示す。磁場をらせん軸に垂直に印加すると,Bc = 0.1 Tで,らせん周期の発散に伴い強制強磁性状態に相転移する。さらに,Yb(Ni1-xCux)3Al9で,希土類化合物として初めて磁場中でキラルソリトン格子(CSL)と呼ばれる特異な長周期磁気構造が見出された。一方,常圧で価数揺動状態にある同型構造のYbNi3Gs9は,加圧すると臨界圧Pc=9 GPa以上で磁気秩序を示す。我々はこれまでに,YbNi3Gs9のPc以上の磁気秩序状態で磁場誘起の比熱異常を見出し,また,その磁気秩序状態での磁気抵抗とホール係数測定から,そのCSLの可能性を指摘した。本年度はYbNi3Gs9の圧力誘起超伝導を探索するため,RRR=430の純良単結晶試料の9 GPa付近の電気抵抗を40 mKまでの極低温下で測定した。しかし,超伝導は観測されなかった。また,YbNi3Al9のTM が加圧により低下する起源を調べるために,2.5 GPaまでの電気抵抗と磁化を測定した。加圧すると,TMとBcは共に低下した。加圧による電気抵抗の近藤散乱の抑制は相対的なRKKY相互作用の増大を示唆する。RKKY相互作用の増大にもかかわらずTMとBcが低下することは,加圧に伴うDM相互作用の抑制を示唆する。0.3 KにおけるBc(P)/Bc(0)の圧力に対する減少率は,0 TにおけるTM(P)/TM(0)のものと比べて2倍程度大きい。この減少率の相違は,TMがRKKY相互作用の影響を受ける反面,Bcはその寄与を受けずDM相互作用と相関するために生じると考えられる。これらのYbNi3Al9の成果を学術論文にまとめ出版した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件)
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 89 ページ: 044715-1/5
10.7566/JPSJ.89.044715
JPS Conf. Proc.
巻: 29 ページ: 015001-1/6
10.7566/JPSCP.29.015001
巻: 29 ページ: 015006-1/6
10.7566/JPSCP.29.015006
巻: 30 ページ: 011121-1/4
10.7566/JPSCP.30.011121
巻: 30 ページ: 011159-1/5
10.7566/JPSCP.30.011159
巻: 30 ページ: 011160-1/6
10.7566/JPSCP.30.011160
巻: 30 ページ: 011167-1/6
10.7566/JPSCP.30.011167
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 88 ページ: 054704-1/5
10.7566/JPSJ.88.054704
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10.7566/JPSJ.88.083703
Phil. Mag.
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10.1080/14786435.2019.1646438