研究領域 | なぜ宇宙は加速するのか? - 徹底的究明と将来への挑戦 - |
研究課題/領域番号 |
18H04333
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡本 崇 北海道大学, 理学研究院, 講師 (50541893)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 銀河形成 / ダークマター / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
宇宙論的な銀河シミュレーションコードにおいて,超新星爆発の影響を適切に取り入れる新たな方法を実装した.この実装にもとづいて,天の川銀河質量の銀河の形成を標準的なコールドダークマター (CDM) とダークマター同士の弾性衝突を許す self-interacting dark matter (SIDM) を用いて高分解能シミュレーションで追い,衛星銀河とそれに付随するダークマターハロー(サブハロー)の性質を調べた.その結果,どちらのダークマターを仮定した場合でもサブハローは,ダークマターのみのシミュレーションと比較して,銀河形成過程を考慮すると中心密度が減少し,潮汐力によって破壊されやすくなることが明らかになった.また,SIDM ではダークマター同士の弾性衝突によりサブハロー中心部に密度一定のコア構造が作られるため,CDM よりもより潮汐破壊の影響を受けることが分かった.そのため,SIDM を仮定した場合 CDM と同等の衛星銀河の光度関数を得るためには超新星爆発の影響を弱めるか,天の川銀河のハローが今回用いたものよりも重い必要がある.
また,衛星銀河問題がどれほど深刻なのかを調べるために,系外銀河の衛星銀河光度関数を調べる観測プロジェクトに参加し,母銀河の質量は同程度でも衛星銀河の光度関数は数倍程度異なることが示された.これは銀河形成シミュレーションからの予言とも一致する.
ALMA を用いた遠方銀河の観測プロジェクトにも参加し,赤方偏移 z = 9.1 の銀河からの酸素輝線の検出に成功した.これは,分光的に得られた赤方偏移としては最遠方のものとなり,宇宙初期の銀河内のガスの物理状態を知る上で大きな手がかりとなるものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に必要な銀河形成過程や SIDM 及び,ダークマターとバリオンが重力以外で弱く相互作用するモデルの実装を終えた.また CDM と SIDM を仮定した天の川質量銀河の銀河形成シミュレーションを行ってダークマターの性質の違いによって得られる衛星銀河の光度関数がどのように変化するかを明らかにすることができた.この知見にもとづいて CDM と同等の衛星銀河光度関数を SIDM で再現した上でサブハローの性質を調べることが可能になった. また,ダークマターとバリオンが弱く電磁相互作用するモデルを用いたシミュレーションを世界で初めて行った.
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今後の研究の推進方策 |
SIDM のもとで CDM と同等の衛星銀河光度関数を得るために超新星爆発の影響を弱めたモデルと,現在のシミュレーションよりも質量の大きな銀河を用いたシミュレーションを行う.同等の衛星銀河光度関数が得られたら,CDM と SIDM のシミュレーションの衛星銀河サブハローの構造を比較し,その構造からダークマターを区別可能かどうかを議論する.
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