研究領域 | なぜ宇宙は加速するのか? - 徹底的究明と将来への挑戦 - |
研究課題/領域番号 |
18H04347
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
茅根 裕司 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 客員准科学研究員 (90649675)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙マイクロ波背景放射 / 観測的宇宙論 / 原始重力波 / ビッグデータ / 重力レンズ / インフレーション / 構造形成 / データ解析 |
研究実績の概要 |
最新の宇宙マイクロ波観測実験Simons Arrayの建設、デプロイメント・遠隔観測準備、初期観測、「ファーストライト」解析、パイプライン開発を行なった。特に日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)で開発したSimons Arrayの最初のレシーバーPOLARBEAR-2Aのデプロイメントを実施した。特に私は、遠隔からの観測監視が可能なる「ライブモニター」システムの開発と実装を行なった。現在はこのシステムにより、世界中からチリのサイトの様子を監視することが可能である。「ファーストライト」解析ではVenusを中心に惑星のデータを取得・解析し、光学系に大きな問題がないことを確認した。これを含めたデータ解析(時系列解析、マップメイキング、パワースペクトル解析等)に向けた解析パイプラインの設計、開発を進めた。これらの成果に関しては、日本物理学会・日本天文学会の年会で報告を行った。 並行してSimons Arrayの前実験であるPOLARBEAR実験による重力レンズサーベイデータを使った科学解析を進めた。特に、日本のすばる望遠鏡に搭載されているHyper Suprime-Cam (HSC)によるSubaru Strategic Program Dataと、POLARBEARによる相互相関解析を行い、CMB偏光だけを使ったものとしては世界で初めて重力レンズ信号の測定に成功した。これらの成果をまとめた論文をThe Astronomical Journalとarxivに投稿する予定である。またAmerican Physical Society (APS) April 2019 meetingで口頭発表を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究の中心となる最新のCMB偏光観測実験Simons Arrayのデプロイメントが始まった年である。日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)で開発された最初のレシーバーPOLARBEAR-2Aの設置が行われた。それに合わせて、観測スケジューリング、遠隔観測のための「ライブモニター」、デプロイメント時におけるクイックデータ解析、それによるデプロイメント作業へのフィードバック・改善を進めてきた。「ファーストライト」解析により、大枠で光学系に問題ないことが確認された。現在は更に多くの検出器のビーム、ノイズレベルの導出を日米の研究者が中心となって進めている。これと並行して、近い将来のCMB科学観測・解析に向けた観測の準備、データ解析パイプラインの開発を行ってきた。時系列解析、マップメイキング、パワースペクトル解析等の開発を行うのはもちろん、ブラインド解析を活用したヌルテストや系統誤差解析を可能にするフレームワークの設計・実装を始めている。更に、データを効率よく解析できるように、High performance computing (HPC)を活用した設計・実装を取り入れている。 Simons Arrayの前実験であるPOLARBEAR実験による科学解析も大きな研究ターゲットである。特に重力レンズサーベイデータを使った科学解析を進め、日本のすばる望遠鏡に搭載されているHyper Suprime-Cam (HSC)によるSubaru Strategic Program Dataと、POLARBEARによる相互相関解析を行い、CMB偏光だけを使ったものとしては世界で初めて重力レンズ信号の測定に成功した。そのほかにも半波長板を使った大角度スケールでのBモード観測の実証を進めている。近いうちに結果の公表を行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
POLARBEAR-2Aのデプロイメントを更に進め、科学観測readyの状態にいち早く移行させる。特にガウスノイズの大きさ、1/fノイズの評価を早急に行う。科学観測を開始した際には「ライブモニター」を活用したリモートによる観測を推進する。一方でチリサイト現地での作業が必要な場合は、積極的に現地に赴き早急な解決を目指す。「データクオリティ」を担保するフレームワーク、科学解析を行うパイプラインフレームワークの開発・実装を進めていく。この際、次世代マイクロ波観測実験Simons Observatoryで開発を行っているフレームワークとの共通化を進めるなどし、開発の効率化を目指す。前述のように必要に応じてチリへの出張、日米間の出張、更には計画の進捗・必要性を勘案して中型・大型計算機クラスタ(GPUやXeon Phiを搭載したもの)の購入を検討する。現在進行中の前実験であるPOLARBEARの全てのデータ解析について、この年度内の完了を目指す。これを数報の論文として報告する予定である。
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