研究実績の概要 |
本研究の目的は、すばる望遠鏡新超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam (HSC)によるすばる望遠鏡戦略枠サーベイのデータを用いた弱重力レンズ効果の測定を通して、世界最高精度で宇宙の加速膨張の性質に制限を付けることである。本年度は、昨年度に引き続き、Sloan Digital Sky Survey (SDSS) III / Baryon Oscillation Spectroscopic Survey (BOSS)の分光銀河カタログとHSCサーベイ初年度の銀河形状カタログを組み合わせることで、銀河自己相関関数と銀河弱重力レンズ効果を測定することで、宇宙論パラメータに制限を付けるための研究を主に行なった。モック信号を用いて高精度で宇宙論情報を引き出すための理論モデルを構築し、実際のデータを用いて、Dark Energy Surgey (DES), Kilo Degree Survey (KiDS)などの世界の他の競合するサーベイと同等もしくはそれ以上の精度で宇宙論を制限することが可能となった。本解析はブラインド解析を行っており、さらなる系統誤差のテストの後、次年度始めにはブラインドを取り去り、論文を執筆する予定である。 HSCサーベイ初年度の銀河形状カタログを用いた他の解析としては、高感度・高角度分解能マイクロ波望遠鏡PolarBearで測定された重力レンズ効果とHSCで測定された重力レンズ効果の相互相関を測定する研究を行った。 昨年度から行ってきた、HSCサーベイ3年目まで銀河形状カタログの作成は、画像解析に問題が見つかったため、サーベイ4年目までのデータを用いた新しい画像解析に基づいた作成を行った。系統誤差のテストはほぼ完了し、来年度始めには画像シミュレーションを用いた銀河形状の補正係数を求め、銀河形状カタログが完成する予定である。
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