マントルの状態や対流に大きな影響を与える「水」を含む揮発性物質の循環を明らかにすることは固体地球のダイナミクスと進化の理解に不可欠である.しかし、揮発性であるが故に分析困難であった固体試料中の定量分析や同位体比分析は,未踏の分析領域であった.本研究では,高温高圧実験生成物や天然マントル試料のあらゆる鉱物及びガラスに対応した二次イオン質量分析計による水素定量分析及び同位体分析法を融合し、構造物性班、同位体班、元素分配班,技術開発班の実験試料、天然試料の微量水素定量分析を行い、軽元素地球深部物質循環の解明に新展開をもたらす事を目指した. 連携研究者の佐野博士とは,水素同位体比及び水素同位体マッピングにより,高圧実験条件(温度,圧力,時間)の評価に成功し,オリビンーワズレアイトの水素同位体分別の評価を行った。高温高圧実験条件を水素の二次元分布を用いることで保持時間などを評価することに成功し、オリビンとワズレアイトの間で水素同位体分別係数を求め、国際会議にて発表した。現在、投稿論文作成中である。 技術開発班桑原博士とは,金属鉄-ケイ酸塩液相間の炭素分配係数を制約するため,標準試料の測定法開発に成功し、合成試料のケイ酸塩ガラスの微量な炭素濃度を測定することに成功し、投稿論文として成果を報告した。 構造物性班太田博士とは、DACによる地球コア圧力条件における鉄の拡散係数を推定するために、約20ミクロンの微小な試料の同位体分析法及び深さ方向分析の開発を行い、予備実験結果として、温度圧力条件、保持時間の最適化に成功し、予察実験結果として複数の鉄の自己拡散係数の取得に成功し、国際会議で発表した。
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