研究領域 | 核-マントルの相互作用と共進化~統合的地球深部科学の創成~ |
研究課題/領域番号 |
18H04373
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
大林 政行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球深部ダイナミクス研究分野, 主任研究員 (30359179)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核マントル境界 / LLSVP / マントルプルーム / スラブ / 波形インバージョン |
研究実績の概要 |
本研究では太平洋LLSVPの北西端に位置する線状の強い低速度異常を対象にし,波動理論に基づいた地震波形インバージョンによって3次元地震波速度構造を求める.インバージョンを実行するにあたってはまず対象領域を決定する必要がある。そのために太平洋LLSVPの北西端にScS波SKS波が通過するようなデータをグローバルネットワーク,日本の観測点網,中国の観測点網2007-2015年の9年間の中から約1000の地震分収集した。その中から波形インバージョンするために必要十分と考えられる約100地震を選び、そのScS波SKS波の分布から領域を設定した.その際にデータの質をチェックしインバージョンに使用可能なデータ数と震源をなるべく均等に分布させるという観点から選択を行った.次にイベントを数個選択し,波形インバージョンに必要な約10秒までの理論波形計算、カーネルの計算を行った.さらにそれらを使ったインバージョンを実行し詳細な地震波速度構造を予察的に推定した.推定された構造を用いて理論波形を計算して観測波形と比較したところ,理論波形は観測波形を説明するようになっており,インバージョンがおおむね良好に実施できたと言える.得られた構造はScS波ーS波,ScS波ーS波走時インバージョンで得られた局所的なS波の低速度異常を再現し,またさらに細かな構造の解明の可能性を示唆するものであり,したがって本計画手法の有効性を示すものである.また計算時間の観点も含めた本計画の実現可能性を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で波形インバージョンによるモデル構築するために(1)領域の設定(2)理論波形およびカーネルの計算(3)インバージョンの実行(4)得られたモデルの評価 という4ステップに分けて実行する計画であり,2018年度は(1),(2)を主に行い,可能であれば(3)インバージョンの実行まで行う予定であった.従って(3)の一部まで実行できている現状は順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は選択したすべてのデータについてスペクトル要素法を使用し波動場の厳密な計算,Adjoint 法を使用したカーネルの計算を行い,波形インバージョンを実行していく。具体的には観測記録とのミスフィットを震源時間関数とすることで,全ての地震-観測点ペアに対するミスフィットカーネルを計算する.次に得られたカーネルを使い共役勾配法にてインバージョンを実行する.観測波形と理論波形の残差が十分小さくなるまで,このステップを繰り返す.その後得られたモデルの解像度などの評価を行い,異常な構造を作る成因について考察する.
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