抗体医薬など新しいタイプの医薬品が大きな市場を形成しているが、依然として現在使用されている医薬品の大部分は低分子量の有機化合物である。低分子医薬品は、安価に製造でき、経口吸収性に優れており通院による治療にも適している。 低分子医薬が働きかける生体内分子はタンパク質が一般的であり、化合物は標的タンパク質の活性ポケットなど小さなエリアに結合する。低分子自体のサイズが小さいことは、同時に本質的な弱点ともなっており、タンパク質の広いエリア、もしくは全体が疾患に関与する場合には、その働きを止めることが難しい。分子サイズが大きい中分子を用いることよって、低分子とは異なる創薬標的を見出すことができると期待される。 本研究では疾患標的に結合させるための低分子(標的化リガンド)と、薬効を発現させるためのタグを結合した中分子量のキメラ分子の研究を行ってきた。それぞれのユニットに標的化と薬効発現を分担させることにより、汎用性の高い創薬プラットフォーム技術に発展させることを目指した。標的化リガンドとしては、医薬品として既に使用されている低分子、および、研究試薬として報告実績がある低分子を調査した。これらのリガンド候補分子は、開発経緯から当然のことならが自身が生物活性(阻害効果など)を有している。このため、新たに合成したキメラ分子の機能評価においては、リガンド本来の効果との切り分けに注意を払う必要があった。標的化リガンドとタグ部分をつなぐスペーサー部分の構造や長さについて検討を行なった。
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