低分子医薬品は、標的タンパク質のポケットなど小さなエリアに結合する。この性質は低分子特有の分子サイズによるものであり、タンパク質の広いエリア、もしくは全体が疾患に関与する場合には、本質的に阻害することが難しい。中分子を用いることよって、低分子とは異なる創薬手法を見出すことが期待されてきた。 本研究では疾患標的に結合させるための標的化リガンドと、薬効を発現させるためのタグを結合した中分子量のキメラ分子の研究を行っている。それぞれのユニットに標的化と薬効発現を分担させることにより、汎用性の高い創薬プラットフォーム技術に発展させことを目指した。 本年度は、キメラ分子のタグ部分について新規の合成展開を行い、構造と活性の相関について情報を得た。その結果、昨年度に注力したスペーサー部分と合わせて、キメラ分子の活性をほぼ目的の水準に到達させることができた。さらに、キメラ分子の作用機構を調査するため、タグ部分に近接化する生体高分子を化学標識するための新規プローブを設計した。その結果、作用に関わると予想される複数のタンパク質のバンドを検出することができた。これらのバンドの同定によって、作用機構の解明が将来進めば、より合理的にキメラ分子を設計することが可能となるだろう。 本研究では、主に培養細胞を用いて活性評価を行ったが、モデル動物などin vivoの系でも今後検討を続けて、創薬手法としての定着をはかっていく。
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