研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H04379
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
徳山 英利 東北大学, 薬学研究科, 教授 (00282608)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中分子 / インドールアルカロイド / カップリング / Friedel-Craftsアルキル化 / チオフェノール |
研究実績の概要 |
本研究課題では、合成終盤でのカップリングに耐えうる官能基共存生に優れた画期的な方法論の確立し、誘導体合成を視野に入れた二量体型生物活性中分子アルカロイドの効率的全合成を達成することを目的としている。本年度は、すで達成している二量体型インドールアルカロイド、ハプロファイチンの全合成経路を基盤として、ハプロファイチンの類縁化合物であるシミシドフィチンの収束的合成に取り組んだ。まず、ハプロファイチンの全合成研究の過程で確立したAgNTf2を用いたハロインドレニン誘導体と電子豊富アニリン誘導体とのFriedel-Crafts 型のカップリング反応を応用し、第四級炭素中心の構築を伴った二つの多環性インドールユニットの連結に成功した。その後の、シミシドフィチンの左ユニットのメチル基が置換した1,2-ジアミノエテン構造の構築は、中間体及び生成物が酸素に対して極めて不安定で困難を極めたが、これまで申請者らが確立したチオフェノールを用いた酸化反応に着目し、酸化還元電位の低い4-メトキシチオフェノールを作用させることで酸化を抑制した選択的なノシル基の除去に成功した。その後、メチル化を行うことで、メチル基が置換したジアミノエテンの構築に初めて成功した。最終工程における保護基の除去により、シミシドフィチンの提唱構造を構築したが、本化合物は空気中で不安定であることが分かり、シミシドフィチンの構造は誤りであることを示唆する重要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、独自に開発した、合成終盤での空気酸化を契機とする骨格転位反応を、その反応機構に基づいて、拡張することで、未だ合成されていない二量体型中分子アルカロイドの初の全合成に成功した。目的の化合物を安定な形で単離することは、予想に反してできなかったが、合成して初めて当該アルカロイドが空気中酸化を受けやすく極め不安定であることがわかったことは、これは独自の全合成経路を世界で初めて確立することができたから得られた結論であり、全合成の重要な意義の一つであると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで得られた成果を最大限に活かして、ハプロファイチンやシミシドフィチンなどとは、全く異なる結合様式を有する二量体型インドールアルカロイド中分子の構築法を検討し、ボカンジミンやケトミン、ボブツシンの効率的全合成の達成を目指し精力的に検討を継続する。
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