研究実績の概要 |
2019年度は,不均一系触媒の開発とその触媒を用いた種々の精密フロー合成系への展開をを行った.まず,金―白金二元金属ナノ粒子触媒をポリシランに担持した触媒を開発し,本触媒がアントラキノンやナフトキノンといった強い還元力を必要とするキノンの,対応するヒドロキノンへの選択的な水素化反応に高い活性を示すことを見出した.本触媒をカラムに充填して行う連続フロー系にてアントラキノンの水素化反応を行ったところ,バッチ系に比べ選択性が向上し,触媒活性を損なうことなく,長時間に渡り空気に不安定なアントラヒドロキノンを得ることができた.そこで,キノンの水素化のための連続フロー反応系と,ヒドロキノンの誘導化のための連続フロー反応系を連結することで,その空間的反応集積化を実現した.誘導化反応としては,メチル化,アセチル化,トリフルオロメタンスルホニル化,メタクリル化反応において,いずれの場合もキノンの水素化からの二段階の連続反応で85-99%と非常に高い収率をもって,目的の誘導化されたヒドロキノンを得ることができた. また,キラルジエン配位子構造を導入した高分子を調整し,本高分子にロジウムー銀二元金属ナノ粒子を固定化することができた.本触媒は,外部添加の配位子を必要とせず,様々なアリールボロン酸の不斉1,4付加反応に対して高い活性と高いエナンチオ選択性を持って機能した.また,活性,選択性を維持したまま,回収,再使用も可能であった.さらに,本触媒をカラムに充填し,基質を流通することで反応を行う,連続フロー不斉合成系において,長時間に渡って98%ee,90%以上の収率を維持して目的物を得ることができた. さらに,新たに開発したロジウムナノ粒子をポリシランに担持した触媒を開発し,β,γ不飽和ケトエステルへのアリールボロン酸の不斉1,4付加反応が,高いエナンチオ選択性および収率をもって進行することを見出した.
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