研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H04387
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
長澤 和夫 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10247223)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グアニン4重鎖 / リガンド / トポロジー / オキサゾール |
研究実績の概要 |
グアニン四重鎖(G4)は、グアニン残基を豊富に含む1本鎖の配列で動的に形成されるDNA高次構造であり、G4に結合するタンパク質を介して、様々な生命現象(複製、転写等)を制御する。一方G4は、配列や周辺環境に依存して多様な構造(トポロジー:ハイブリッド、アンチパラレル、パラレルの3種に大別される)に変化する。G4の各トポロジーと生命現象との関連を解析するためには、各トポロジーを選択的に安定化する低分子化合物リガンドの開発が必須である。 これまで我々は、放線菌の2次代謝産物として単離されたテロメスタチンをリードに、G4と普遍的かつ強力に相互作用するG4リガンドとして、大環状ヘキサオキサゾール類(6OTD類)を創製してきた。これまでの6OTDに関する構造展開研究で、ハイブリッド型およびアンチパラレル型トポロジーと相互作用するリガンド類を創製してきた。そこで本研究では、パラレル型G4トポロジーと選択的に相互作用し安定化するリガンドの創製を目的とした。本年度は、6OTDの基本骨格中に、対称的な位置に側鎖が4本導入されたリガンドを新たに創製した。その結果、当該リガンドがテロメアのモデル配列(telo24)をパラレル構造へ誘起し、さらに当該構造を強力に安定化することを見出した。また本リガンドは、ナトリウムやカリウムなどのイオン非存在下でもパラレル構造へ誘起することがわかった。またテロメア以外の代表的なG4形成配列数種について同様の検討を行った結果、いずれの配列においても同様にパラレル型トポロジーを誘起することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パラレル型G4トポロジーと選択を安定かするリガンドの開発を目的とし、これまでに精力的に構造展開を行ってきた大環状ヘキサオキサゾール類(6OTD類)の母骨格を元にドッキング解析を行った。その結果、6OTD骨格の側鎖に着目した構造展開により目的とする機能を持つリガンドの創製が期待できることが示唆された。そこで側鎖の導入本数に着目した構造展開を系統的に行い、得られた化合物のトポロジー誘起能の評価をCDスペクトル測定により行った。その結果、6OTDの対称な位置に4本のアルキルアミノ側鎖を導入した化合物がテロメアモデル配列をパラレルトポロジーへ強力かつ選択的に安定かすることを見出した。本リガンドは、ナトリウムやカリウムなどの非イオン存在下においても同様の機能を持つ。またテロメア以外の代表的なG4形成配列においても同様にパラレル型へ誘起することがわかった。以上、計画通り成果が得られていることから、研究計画は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
獲得したパラレル型G4を誘起する化合物について、今後NMRによりその相互作用様式の解析を進める。ただしNMRでの解析は、ピークの重なりや構造の揺らぎなどの問題により困難が伴う場合も考えられる。ドッキングスタディを活用する解析も同時に進めて行く。またこれまでトポロジー選択的なリガンド開発において、標的トポロジーを選択的に安定化するリガンドの創製には成果を得ているものの、異なるトポロジーから目的とするトポロジーへの誘起には課題が残っている。そこで他のトポロジーから標的トポロジーを選択的に誘起し安定化するリガンドの創製に取り組む。具体的には、より柔軟性の高い鎖状型ポリオキサゾール骨格に着目し、当該骨格の詳細な構造展開により、目的とする機能を有したリガンドの取得を目指す。
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