研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H04390
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田中 浩士 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (40334544)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ホウ素化合物 / 鈴木宮浦反応 / 環拡大反応 / リグナン / 非対称化 / リンカー / ワンポット連続反応 / 立体選択的合成 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、環状ホウ素化合物を鍵中間体として用いる官能基化された機能性中分子の合成を検討している。環状ホウ素化合物は、開環をともなう鈴木宮浦反応によって、末端に反応性がもとの環状ホウ素化合物とは異なるホウ素化合物となる。例えば、環状ボランは、ボリン酸誘導体を与え、環状ボラートはボラン誘導体を与える。ボランからは、反応温度を制御することにより、連続かつ段階的な反応が可能である。一方、ボラートからは、水酸化物イオンの添加により反応の制御が可能であると考えられる。さらに、環状ボランは、環拡大反応によって大環状ボラン化合物へと誘導できる。すなわち、環状ホウ素化合物は、両末端が異なる置換基によって修飾された中・高分子化合物の合成中間体としての利用が期待できる。これまでに環状ボラン化合物を出発原料とする連続的な鈴木宮浦反応およびそれを利用した免疫抑制作用を有する糖脂質誘導体の合成を報告している。当該年度では、環状ホウ素化合物の環拡大反応および環拡大された環状ホウ素化合物を利用する連続的鈴木宮浦反応および、環状ボラートを利用した連続カップリング反応を検討した。その結果、合成した7員環環状ホウ素化合物を出発原料として、メチリドを用いる環拡大反応による平均18員環から環状細化合物の合成と、ブロモナフタレンを用いる連続的鈴木宮浦反応による両末端に芳香環を有するアルカン誘導体の合成に成功した。さらに、環状細化合物のホウ素上の置換基を工夫することにより、空気下安定な環状ボラート誘導体の合成を達成した。本環状ボラート誘導体は、無水条件および含水条件の鈴木宮浦反応を段階的に進行させることにより、非対称化合物への誘導が可能になることを明らかにし、それを利用した天然物の合成を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、環状ホウ素化合物を鍵中間体として用いる官能基化された機能性中分子の合成を検討している。すなわち、環状ホウ素化合物は、両末端が異なる置換基によって修飾された中・高分子化合物の合成中間体としての利用を検討している。これまでに環状ボラン化合物を出発原料とする連続的な鈴木宮浦反応およびそれを利用した免疫抑制作用を有する糖脂質誘導体の合成を報告している。当該年度では、環状ホウ素化合物の環拡大反応および環拡大された環状ホウ素化合物を利用する連続的鈴木宮浦反応および、環状ボラートを利用した連続カップリング反応を検討した。その結果、合成した7員環環状ホウ素化合物を出発原料として、メチリドを用いる環拡大反応による平均18員環から環状細化合物の合成が可能であることを見出した。合成した大環状環状ホウ素化合物に対し、ワンポットで、パラジウム触媒とブロモナフタレンを作用し、加熱したところ、速やかに2回の連続的鈴木宮浦反応が進行し、目的物を良好な収率で得た。この事により、大環状環状ホウ素化合物も7員環環状ホウ素化合物と同様な反応性を有することを明らかにした。による両末端に芳香環を有するアルカン誘導体の合成に成功した。続いて、中間体として安定な環状ホウ素化合物を用いるシステムの開発として、環状ボラートの合成とそれを用いる鈴木宮浦反応を検討した。その結果、環状環状細化合物のホウ素上の置換基をテキシル基からより小さなものにすることにより、空気下安定な環状ボラート塩の合成に成功した。さらに、本環状ボラート誘導体を用いる連続的かつ段階的鈴木宮浦反応が可能であることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、可溶性の基質を利用した環状ホウ素化合物の環拡大反応および、それを利用する鈴木宮浦反応が可能であることを明らかにしている。さらに、適切に置換基を選択することにより、環状ホウ素化合物から空気下安定な環状ボラート誘導体へと変換可能であることを見出している。さらに、そのボラートは鈴木宮浦反応の基質となることも明らかにした。今後は、マイクロリアクターを用いて、環拡大反応とボラート化を連続的に行うことにより、様々な化合物の合成に利用できるビルディングブロックも合成とそれを利用した誘導体の合成を検討していく。
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