研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H04391
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大森 建 東京工業大学, 理学院, 准教授 (50282819)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | フラボノイド / ポリフェノール / カテキン / オリゴマー / 中分子 |
研究実績の概要 |
本研究事業の初年度となる研究においては、複雑な中分子フラバンオリゴマーの合成と機能探索について、それぞれ進展があった。まず、オリゴマーの合成については糖鎖合成において頻用されるオルトゴナル法と、独自に見出したアヌレーション法を組み合せて用い、累積二重連結構造を有するフラバンオリゴマーであるエスクリタンニンCおよびカテキン-エピカテキン複合四量体の初の全合成に成功した。この方法の鍵は、ジオキシ基を活性化基に有するフラバン単位とジチオ基を活性化基に有するフラバン単位を交互に活性化する点にある。なお、この方法論の検討の中で、反応(アヌレーション)の位置選択性について興味深い知見が得られた。すなわち、ジチオ基を有するフラバン単位をソフトなルイス酸を用いて活性化すると、通常形成が難しい位置(6位)での結合ができることを見出した。そしてその反応性の本質は、生成しうるカチオン種の安定性の差に起因することが分った。 以上の検討により、上記のカテキンーエピカテキン四量体の合成が可能となった。この位置選択性について詳しく調べたところ、生成するカチオン種の安定性の差が理由であることが分った。 次に、この手法を応用して様々な類縁化合物を合成し各種の生理活性評価を行った結果、幾つかの興味深い結果が得られた。例えば、三量体構造を持つオリゴマー(セリゲアインA)が有する甘味について、ヒト甘味受容体と共役するGタンパク質を安定発現させた培養細胞を用いた細胞評価系にて活性を評価したところ、低濃度で顕著な細胞応答が観測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要にも記したように、H30年度の研究においては予想以上の成果が得られた。特に合成目標の一つであったカテキンーエピカテキン四量体の合成については、当初かなりの時間を要すると予想していたが、開拓した方法論が効率的であったため、予想よりかなり早く合成することに成功した。また、この合成の途上、合成したフラバン単位の反応性および反応の位置選択性などに関して興味深い結果が得られたが、詳しい検証実験を行った結果、予想とはことなる反応機構で進行していることが分った。この知見は、本法のさらなる研究の展開に繋がりうる重要なものである。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までに得られた知見をもとに、本年度は多様な結合形式ならびに置換様式を有するフラバンオリゴマーを合成し、各種の生理活性等を共同研究などを積極的に進めながら行いたい。また、反応の解析について量子計算などのアプローチも行いながら、理論的な理解を深める試みも進めたい。
|