研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H04397
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
間瀬 暢之 静岡大学, 工学部, 教授 (40313936)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 特殊反応場 / フロー手法 / マイクロウェーブ / ファインバブル / 多相系反応 / 機械学習 / 集積化 / ものづくり |
研究実績の概要 |
フロー手法による多段階合成を指向した実用的な反応を開発するには、工程数を減らすことが鍵であり、後処理が容易または必要としない反応開発が望まれる。この課題に対し、当量反応や気体が関与する反応を追究することで解決できると考え、急速的・物質選択的に加熱または停熱する技術であるマイクロウェーブ(μW)と、液体中に気体を高濃度に分散する技術であるファインバブル(FB)に着目し、(1)μWとフロー合成の融合:難合成の連続生産、(2)FBとフロー合成の融合:多相系フロー反応の深化に挑戦した。さらに、フロー手法の一般化を推進するために、フロー反応条件迅速最適化手法を導入する。これにより日本発の新たなフロー合成技術を確立し、ものづくり化学プロセスのグリーンフロー化に貢献する。 平成30年度に(1)マイクロウェーブとフロー合成の融合:難合成の連続生産に取り組み、(1-1)基質選択的加熱を指向した無触媒エステル化反応、ならびに(1-2)中間体選択的加熱を指向した中分子環状ポリ乳酸合成を検討した。(1-1)について、基質選択的過熱の可能性を明示できなかったがkg/dスケールでの連続合成が可能となった。また、(1-2)について通常加熱と比較して、低分子量の分子量3,000以下の環状ポリ乳酸が得られた。さらに、(2)ファインバブルとフロー合成の融合:多相系フロー反応の深化に取り組み、(2-1)FBフロー手法による化学選択的フェノール誘導体の水素化を実施し、スラグフローを凌駕する反応性と選択性を発現するFB-スラグフロー手法を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「(1)マイクロウェーブとフロー合成の融合:難合成の連続生産」に関して、根拠不十分ではあるが、予定通りに進んでいる。また、平成31年度に開発終了予定だった「(2)ファインバブルとフロー合成の融合:多相系フロー反応の深化」を平成30年度にほぼ終了した。さらに、平成31年度に取り組む予定だった「(3)μWフロー手法とFBフロー手法の集積化によるものづくり」におけるFrovatriptan合成について取り掛かり始めた。
|
今後の研究の推進方策 |
特殊反応場における連続合成に関する以下の課題に取り組む。(1)マイクロウェーブとフロー合成の融合:難合成の連続生産、(1-1)基質選択的加熱を指向した無触媒エステル化反応:生成物のエステルより基質のアルコールやアシル化剤の方がμWに対して高誘電特性を示すことから、独自開発した基質選択的μW加熱による無触媒フローエステル化を追究し、本手法の優位性を証明する。(1-2)中間体選択的加熱を指向した中分子環状ポリ乳酸合成:がん細胞抑制効果を有する分子量3,000以下の中分子環状ポリ乳酸を効率的に合成するために、誘電特性が高いと想定される両性イオン活性中間体経由の有機分子触媒的開環μWフロー重合を実施する。(2)ファインバブルとフロー合成の融合:多相系フロー反応の深化、(2-1)FBフロー手法による化学選択的フェノール誘導体の水素化:スラグフローを凌駕する反応性が期待されるFBフロー手法を確立し、フェノール誘導体の過剰還元を制御した水素化反応システムを構築し、本手法の優位性を証明する。(3)μWフロー手法とFBフロー手法の集積化によるものづくり、(3-1)フロー手法による偏頭痛治療薬Frovatriptanの多段階合成:後処理が容易または必要としない当量反応や気体が関与する反応の利点を突き詰め、フロー手法の集積化とフロー反応条件迅速最適化手法によるグリーンフローものづくりに取り組む。偏頭痛治療薬Frovatriptanを保護基フリーで、カラム精製をすることなく、3ステップフロー合成を実施する。
|