研究実績の概要 |
高脂血症治療薬であるEzetimibeの全合成を指向したアルケニルアルキニルイミンとケテンシリルアセタールとの共役付加反応における種々反応条件の検討を令和元年度は行なった。その結果、ルイス酸としてヨウ化インジウムを用い、ケテンシリルアセタールを作用させることでアルケニルイミノシクロブテノンを中程度の収率で得ることに成功した。得られたアルケニルイミノシクロブテノンに対して酢酸存在下、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いることでイミノ基選択的還元を行うことでアルケニルアミノシクロブテノンを得た。その後、アルケニルアミノシクロブテノンをキシレン溶媒中、1,4-ジメチルピペラジン存在下で加熱することで熱的転位反応が進行し、Ezetimibe合成における合成中間体であるβ-ラクタムを高収率で得ることに成功した。 α-アミノ酸およびその誘導体は天然物や医薬品などによく見られる構造であるため、窒素原子上に異なる置換基を有するアミノ酸誘導体を効率的に合成する手法の開発は非常に重要である。平成30年度に、Comet X-01を用いα-スルホキシイミノエステルのN,N,C-トリアルキル化反応を行った結果、安息香酸の入ったα-スルホキシイミノエステルに対し、EtMgBr、nPrMgBr、BnMgBrを-40 ℃というバッチ条件よりも温和な反応条件で作用させることで、目的のN,N,C-トリアルキル化体が得られることを見出している。そこで令和元年度は、Comet X-01を用いα-スルホキシイミノエステルのN,N,C-トリアルキル化反応の基質用範囲の検討を行った。その結果、安息香酸の入ったα-スルホキシイミノエステルに対し、様々なGrignard反応剤を-40 ℃というバッチ条件よりも温和な反応条件下、順次作用させることで、目的のN,N,C-トリアルキル化体が種々得られることを見出した。
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