合成目標の中分子を、抗腫瘍活性をもつテルペン・メレオリドおよび抗ウイルス活性をもつネオリグナン・ヘリソリンに設定し、その全合成および生物活性の評価を実施した。メレオリドの合成においては、昨年までに達成した類似のパエスレリンAの後期での官能基変換の困難課題を回避し、第2世代の合成法を確立した。数種の関連天然物の全合成に成功し、活性評価を行った結果、植物成長活性を有することを新たに見出した。環境負荷の低い農薬として利用が期待される。また、ヘリソリンの合成では、オルトキノンモノアセタールといった新しい機能性ビルディングブロックを設定し、比較的短工程の全合成の達成に成功した。 また、シクロブタンを利用する集積型分子変換法を利用して、アズレン骨格を含む新規なグラフェンナノリボンの合成研究も実施した。合成品について基本的な物性について情報を整理し、へリックス構造に基づく会合という興味深い現象を見出し、それがレドックス物性に影響を与えることも明らかにした。このほかに、蛍光特性、クロミズム、動的キラリティを示す多環芳香族炭化水素の合成にも成功し、機能性分子としての評価も実施した。 本研究を通し、本新学術領域の班員との共同研究も積極的に実施し、フロー反応の活用や、電解反応の利用、高機能触媒の活用についての検討を行い、新たな知見を得ることができた。これにより、天然物合成の短工程化や供給効率の増加が達成でき、機能評価につなげる基盤を確立できた。
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