(1) アクアミリンアルカロイドの全合成研究 我々はこれまでに、金触媒連続環化反応を基盤としたストリクタミンの形式全合成を達成している。しかしながら、既知のストリクタミン前駆体からストリクタミンに変換する反応を再現できない問題があった。そこで今年度は、新たな合成戦略を用いたアクアミリンアルカロイド骨格の構築を試みた。最初に、アミド型の求核部位を有する環化前駆体の不斉合成を行い、金触媒環化反応を検討したところ、目的の環化体を得ることはできなかった。次に、ニトリル部位を有する基質の環化反応を検討したが、この場合も目的の反応は進行しなかった。一方で、求核部位をカルボン酸に変換した環化前駆体を用いて反応を行ったところ、目的のラクトン体が効率よく得られた。さらに、生じたラクトン部をラクタムに変換にも成功している。ラクタムの還元と分子内アミノ化による窒素官能基の導入を行うことにより、アクアミリンアルカロイドの合成が可能となる。 (2) アスピドスペルマアルカロイドの全合成研究 前年度までに、アスピドスペルミジンおよびマラガシャノール類の基本骨格を一挙に構築する連続環化反応条件の最適化を行った。今年度は本反応の不斉化について検討を行い、リガンドとしてDTBM-SEGPHOS、金触媒のカウンターイオンとしてNaBARFを用いた際に、良好な不斉収率で目的の四環性化合物が得られることを見出した。引き続き、得られた環化生成物を既知のビンドロシン合成中間体に導き、形式全合成を完了した。
|