研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H04416
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
難波 康祐 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (50414123)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 全合成 / 高効率合成 / palau'amine / lapidilectine B / 天然中分子有機化合物 |
研究実績の概要 |
Palau'amineの短段階全合成を目指し、前年度までにC環グアニジノ基を導入した前駆体でのD/E環構築に成功していた。今年度ではAB環の基となるピロールアミド部位を導入した前駆体でのD/E環構築を検討し、CDE環を一挙に構築する手法を確立した。すなわち、ピロールアミドを導入した前駆体ではD/E環形成体が不安定であったため、反応系中でC環構築まで一挙に進行させる必要があった。C環形成体はレトロ反応が進行するため、塩基性条件下の反応系中でC環形成体のみを酸でクエンチすることが求められた。そこで、酸と塩基の両方として機能するアミンを探索した結果、再現性良くCDE環を与える条件を確立した。ついでB環を4工程で構築し、palau'amineのABCDE環をわずか12工程で構築することに成功した。これにより、palau'amineの全ての環構造を15工程前後で構築することが可能となった。
また、複雑な生物活性天然物の多環性骨格を一段階で構築する種々の新たな手法を確立した。すなわち、多環性トロパン骨格の一段階構築およびキノリジジン骨格の不斉一段階構築法を確立した。これにより、種々の複雑な生物活性天然物の高効率全合成が可能となり、これらの手法を適用した医薬品リード化合物の提供が期待できる。さらに、作用機序解明に有効な蛍光分子の開発を行い、1,3a,6a-トリアザペンタレンを連結させた分子がメカノクロミック蛍光を示すことを見出した。本蛍光分子は機械的刺激を検知できるプローブとしての利用が期待できる。
以上の成果を基に、国内学会発表31件、国際学会発表2件、招待講演8件の成果を得ると共に、査読付き国際論文6報、総説2報、著書2冊(和書1冊、洋書1冊)を発表し、特許2件を出願した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では複雑な天然中分子化合物であるpalau'amineの鏡像異性体の生物活性を明らかにすることを目的としている。2018年度ではpalau'amineのABCDE環をわずか12工程で再現性よく構築する経路を確立できたことから、研究期間内にABCDEF環全ての環構造の構築と生物活性の解明が可能と期待できる。 また、複雑な天然有機化合物の高効率合成を可能にするための種々の多環式骨格の一段階構築法を確立した。これにより、(+)-epilupinineの三段階不斉全合成を達成し、StemofolineおよびHimandrineの高効率合成へと展開可能な多環性トロパン骨格の短段階合成を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、palau'amineのABCDE環の構築を達成していることから、残る課題はF環のみである。ABCDE環の構築は、わずか12工程で再現性よく行えることから、2019年度中にF環の構築が達成可能と考えられる。具体的には、D環上アミノ基へのグアニジノ基の導入とシアノ基の還元によってF環が構築できることから、15工程前後での全ての環構造が構築できると期待できる。これにより、palau'amineのアミノメチル基とクロル基が除去された誘導体が得られることから、この誘導体の光学分割とそれぞれの鏡像異性体の免疫抑制活性を調査する。この誘導体でpalau'amineと同等の免疫抑制活性が得られなかった場合には、アミノメチル基とクロル基を導入した原料を用いて同様の合成法を適用し、20工程前後でのpalau'amineの全合成を達成する。誘導体で活性が得られた場合には、種々のプローブを導入し、標的タンパクの同定へと展開する。
また、多環式トロパン環の一段階構築反応を適用したStemofolineの全合成を期間内に達成する予定である。
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