研究実績の概要 |
分子ハイブリッド化法の仕組みの一つとして,高歪みの中員環アルキンとアジドの付加環化反応(Huisgen反応)を利用したクリック反応は極めて重要であるが,中員環アルキンの合成効率や安定性,反応の選択性に難があった.これに対して本研究では,従来の欠点を解消した新型中員環アルキンとして「環内に二つの窒素官能基を有する9員環のアルキン」4,8-diazacyclononyne(DACN)およびその誘導体を考案した.このアルキン分子は合成容易であるとともに,高いクリック反応性,優れた熱的安定性,優れた反応特異性を有し,また多様な分子ユニットを導入することが可能であるなど多くの利点を有している.そこで本研究では,DACN類の効率的合成法の開発と多機能化を検討するとともに各種の応用研究を行うことを目的として種々検討した. 本年度においては,生体機能分子の化学修飾に適した多分子連結型DACNとしてペプチドの修飾に有用なDACN-NHS ester誘導体およびDACN-maleimide誘導体の開発に成功した.また,側基としてDACNを組み込んだポリマーの開発に成功した.本年度においてはさらに,田中教授,山田准教授(名大)の研究グループとの連携研究として,フタロシアニンとポルフィリンをロタキサン構造で繋いだ複合分子の合成において,ロタキサン部分の留め具としてDACNが有効であることを見出した.一方,大神田教授(信州大)の研究グループとの連携研究として,fusicoccin由来のアジドとDACNを導入したペプチドとをクリック反応で繋ぎ,複合化体を得ることに成功した. これらはDACNが機能性分子や生体関連分子の構築に有用であることを明示するものである.
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