研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
18H04424
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
菅 敏幸 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10221904)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 長鎖ポリアミン / アキュレイン類を / ニトロベンゼンスルホンアミド / Ns-strategy / 14量体 / Tr 型レジン / ハロアルカン / クライオプローブ |
研究実績の概要 |
近年の有機合成の革新的な進歩は、10 年前までは合成が不可能であると考えられていた巨大な有機分子の合成も可能にした。例えば、固相合成を基盤とする自動合成は繰り返し構造を有する核酸やペプチドの簡便合成を可能にした。また、それらは生命現象を司ることも多いため、生態機能解明や創薬にも大きな貢献を果たしている。さらに、核酸、たんぱく質、糖質の生体内高分子に加えて長鎖ポリアミン の存在も知られており、他の生体高分子と同様に生物活性と機能解明に掛かる期待が大きい。北海道大学の酒井教授らのグループは、沖縄に生息する海綿 より14 量体のプロピルアミンユニットを有するアキュレイン類を単離構造決定した。本合成では。申請者らのニトロベンゼンスルホンアミドを保護活性化基として用いるNs-strategyにより14 量体のポリアミンを合成することを計画した。また、ポリアミンは高極性なため精製は困難な化合物として知られている。そのため、当研究室でポリアミン合成に実績のある Tr 型レジンを用いた合成研究に着手した。また、長鎖ポリアミンを効率的に合成するために、Nsアミド体とハロアルカンを調整し、それぞれを連結する収束的合成法を用いた。共通中間体である4 量体を合成した後、固相担持型9量体をそれぞれ合成した。その後、固相上でのアルキル化反応を行ったところ、本年度は14量体の合成に成功した。また、Nsアミドの14量体は有機溶媒に難溶なため分析に困難が伴ったが、クライオプローブを用いたNMR測定により構造確認が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くのNsアミド有する直鎖ポリアミンは有機溶媒にであったが、4量体は比較的可溶であることを見出した。そのため、長鎖ポリアミン部分は4量体を共通合成素子として活用し、固相にて合成する合成戦略をとった。また、フラグメントの連結にはスケールアップが容易なポリアミンとハライドとのカップリング反応により行なった。それらの共通合成素子を固相上にてアルキル化反応を行ったところ14量体の合成に成功した。また、本合成では反応を繰り返すことでさらに長いポリアミンや、単量体を組み込むことで自在な長さのポリアミン鎖も合成可能である
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、固相上にてインドールユニットを有する14量体の合成に成功しているため、今後はNs基の脱保護および固相上でも精製の検討を行う。固相上の洗浄を完璧にすることで、一切の精製操作を必要としない画期的なポリアミン合成が可能となる。また、本合成では反応を繰り返すことでさらに長いポリアミンや、単量体を組み込むことで自在な長さのポリアミン鎖も合成可能である。そのため、これら合成中間体からは中分子合成のプラットホームを構築することも容易であると考えている。
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