今後の研究の推進方策 |
ターゲットとしている細胞毒性含臭素トリテルペノイド中分子のうち、デヒドロチルシフェロール、22-ヒドロキシ-15(28)-デヒドロベヌスタトリオール、ユーボールの化学合成法自体は確立できた。しかしながら、ユーボールの化学合成前駆体を使ったVBPO酵素によるA環部のブロモエーテル化反応は進行しなかった。これは当初から予想されていたことではあるが、VBPOによる酵素の基質認識が非常に厳密であるため反応させようとしている合成分子が酵素本来の基質ではないことが考えられる。本研究で扱う含臭素トリテルペノイド中分子の生合成仮説において、VBPO酵素の生合成基質はスクアレンポリエポキシドであることが提唱されている。従って今後の研究の推進方策としては、環化基質により近いと考えられるスクアレンポリエポキシドを化学合成して酵素反応に付してみることが考えられる。 我々の研究室では上記の仮想生合成前駆体と思われるようなスクアレンテトラエポキシドやペンタエポキシドの立体選択的化学合成法を報告している(Morimoto, Y.; Takeuchi, E.; Kambara, H.; Kodama, T.; Tachi, Y.; Nishikawa, K. Org. Lett. 2013, 15, 2966ー2969)。まずはこのスクアレンテトラエポキシドを用いて酵素反応を行うことを考えている。もしこの生合成仮説のような反応が進行すれば、これら含臭素トリテルペノイド中分子に共通する骨格であるABC環部が一挙に構築可能となることから、当初計画よりもより効率性の高い化学合成と酵素合成の反応集積化による高効率合成法が開発できる可能性がある。
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