公募研究
世界で初めて192×1536×3072という超高解像度での太陽全球熱対流・磁場生成の磁気流体力学計算を実行した。このような高解像度にも関わらず20年程度の長期間に渡って数値積分を行った世界最大の計算である。これまでの高解像度計算から、粘性・磁場散逸の低い状況下では、小スケールで磁場を生成する機構が活発になり、小スケールで磁場エネルギーが運動エネルギーを超過し、運動を妨げることが知られていた。この効果により小スケール乱流が大スケール磁場を壊すことを助けていたのだが、今回実行した超高解像度計算では、小スケールのみならず大スケールにおいても徐々に磁場のエネルギーが支配的になってきており、これまでに太陽で考えられていたレジームとかなり違う状況になることが確認された。太陽内部では、プラズマの運動が磁場に対して支配的と一般に考えられたきたが、磁場が支配的てある可能性がでてきた。また、結果として、磁場の効果により太陽で観測されるような赤道が速く、極地方が遅く回転するという差動回転も再現することができた。磁場が強くなった効果で、熱対流の上昇流と下降流の間の熱の交換が妨げられ、上昇流はより熱く、下降流はより冷たくなった。さらに熱対流速度が下がることにより、時間スケールが短くなり回転の効果も効くようになる。結果として、より多くのエントロピーが極の方に運ばれて、緯度方向のエントロピー勾配を作り結果として、太陽のような差動回転分布を作っていることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
世界最大の太陽ダイナモ計算を実行できたこと、その数値計算により新しい物理を発見できたことを高い進捗だと考えている。
平成30年度までに計画していた数値計算は計画通り進めることができたので、当初の予定通り低解像度での周期活動の性質を調べる。研究を行うことにする。マウンダー極小期のような停滞期を励起するような、磁場変動について調査する。低解像度の計算を100年程度おこなうことで、まずは周期を実現する。この低解像度計算を用いて、マウンダー 極小期の研究をおこなう。マウンダー極小期では、数十年間黒点が観測されなかったことが知られているが、これは異常な傾向をもった巨大黒 点がマウンダー極小期の前に発生し、太陽活動に擾乱を与えた可能性が大きいと考えられている。本研究では、周期活動のうちのある時点で、経度方向の磁場に擾乱を与える。擾乱を与えるタイミング、緯度、磁束量、磁場で形作られた円環のサイズをそれぞれ変えることで、続く周期にどのような影響が出るかを見る。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 4件)
Science Advances
巻: 5 ページ: eaau2307
10.1126/sciadv.aau2307
Astronomy & Astrophysics
巻: 622 ページ: A157
10.1051/0004-6361/201834031
The Astrophysical Journal
巻: 860 ページ: L24
10.3847/2041-8213/aacafb
Science
巻: 361 ページ: 1231-1234
10.1126/science.aao6571
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 70 ページ: 63
10.1093/pasj/psy066