公募研究
科学衛星は、地球周辺プラズマ(地球磁気圏)環境の直接計測に大変有用であるが、「その場」観測であるため、プラズマ環境の時間・空間変化の識別や、グローバルな描像の把握が困難である。これに対し本研究では、地球磁気圏内を伝搬するELF/VLF帯のプラズマ波動の伝搬特性を活用して、限られた数の科学衛星による疎な観測情報から地球磁気圏プラズマ環境の全体像を掌握する技術を確立することを目的としている。(1) 内部磁気圏衛星「あらせ」等で測定したELF/VLF帯プラズマ波の伝搬パラメータ解析ツールの開発:あらせ衛星で測定したChorusや雷ホイスラ波の連続波形データから、伝搬パラメータをエレメント単位で求める解析法を開発した。また電子密度・温度などのプラズマ環境に依存する電界センサを厳密に較正するために、プラズマ波動の電磁界強度から求めた波の屈折率の実測値と、観測点で得た電子密度などから理論的に導出した屈折率の定量的な比較、衛星軌道上で定期的に実施した較正運用で得た電界センサ特性のプラズマ密度・温度依存性の評価を進めている。(2)波動の伝搬通路を理論的に求めるレイトレイシング法の開発:同一波源から伝搬してきたと考えられるコーラスや雷起源ホイスラー波が、あらせ衛星とVan Allen Probes衛星で同時観測された観測事例を解析し、波動の到来方向や、両衛星間での波動の伝搬遅延時間などを解析した。現在、これらの観測結果と、レイトレイシングで求めた理論値と比較して、磁気圏内の空間的な電子密度構造の推定を試みている。
2: おおむね順調に進展している
間欠的に取得した連続波形データから、微細なスペクトル構造を持つChorusや雷ホイスラについて、エレメント単位で精彩に伝搬パラメータを求める手法が確立した。これにより、個々の波動の詳細解析が可能となっただけでなく、時間・周波数分解能は低いが網羅的な観測を目指して実装した衛星機上のスペクトルマトリクス演算機能の信頼性評価(機上演算で求めた解析結果の精度評価の指標化)も可能となったため、波形データが存在しない時間帯におけるプラズマ波の網羅的な伝搬パラメータの導出と信頼性の評価に道筋をつけたと考えている。一方、あらせ、Van Allen Probesの両衛星での同一波源からのプラズマ波の同定、さらには地上の雷発生源の特定など、我々が開発したレイトレイシング法による理論計算と定量的な比較が可能な観測イベントを多数抽出できた。これらの観測結果と合致する波動の伝搬通路をレイトレイシングを用いたパラメータサーベイによって調査を進めている。
(1) ELF/VLF帯プラズマ波の伝搬パラメータ解析ツールの開発:電界センサは、アンテナインピーダンス・実効長がプラズマ環境・測定周波数の関数となるため、実測データをプラズマ環境と紐づけて定量評価する必要がある。波動の伝搬パラメータの推定において、伝搬ベクトルはすでに較正法が確立した磁場観測データに加えて、電磁界間の大まかな位相差を知るだけで方向推定が可能であるが、波動エネルギー(ポインティングフラックス)の推定には、厳密な電界強度較正が必須である。この問題の解決のために、ホイスラモード波の観測波形から求めた屈折率の実測値と波動の分散関係式から導出した理論値の比較、衛星軌道上で定期的に実施した較正運用で得た電界センサ特性のプラズマ密度・温度依存性の解析を進める。(2)波動の伝搬通路を理論的に求めるレイトレイシング法の開発:我々のレイトレイシングプログラムは、磁場モデルとしてTsyganenko model、プラズマ密度モデルとしてGlobal core plasma modelを導入しているが、衛星観測点における磁場強度や電子密度は、必ずしも両モデルと合致しない。そこで両モデルを補正するパラメータを新たに追加し、衛星観測点における磁場強度・電子密度、波動の伝搬パラメータの観測値が、レイトレイシングによってすべて再現できるモデル推定法の確立を目指す。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 14件、 査読あり 19件、 オープンアクセス 19件) 学会発表 (91件) (うち国際学会 62件、 招待講演 19件)
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