次世代太陽地球圏環境(宇宙天気)予報システムの構築に向け、衛星障害の発生確率が高いとされる地球電磁気圏じょう乱時の異常衛星帯電を、経験則ではなく物理機構に基づき予測する手法の確立が急務である。R01年度は、従来の3次元プラズマ粒子シミュレーション手法で現実的に取り扱いが可能な時間幅より、ゆっくりとした時間スケールで起こるプラズマ環境変動の効果を衛星帯電評価に取り入れるため、粒子シミュレーションと、衛星電位の時間発展方程式の数値積分を連成させる新たな帯電評価技法を提案した。 一般的に衛星電位の時間発展は、衛星に流入するプラズマ電流と衛星構体の静電容量によって記述される。プラズマ電流は衛星構体電位や形状、衛星が複数の要素から形成されている場合はそれらを接続する電気回路網、および周辺プラズマのパラメータに依存し、解析的に記述できる状況は限られている。提案手法では、衛星構体電位を制御しながら多数回のプラズマ粒子シミュレーションを実施することで、この各プラズマ電流値を決定し、衛星電位時間発展方程式の入力項として用いることにより、衛星電位の振る舞いを近似的に求める。(電位固定された衛星に対する)流入電流の緩和時間が、衛星電位自体のそれより一般的に短いため、粒子シミュレーションのみを用いる従来手法に比べて、より長期間の衛星電位評価を現実的な時間で求めることが可能である。また流入電流のプラズマ環境パラメータに対する依存性をあらかじめ調べておくことにより、宇宙環境じょう乱に対する衛星電位応答を調べる目的に使用可能である。当該提案手法を時間変動するプラズマ波動環境下の帯電評価に適用し、妥当な予測が行えることを確認した。今後宇宙環境データベースや磁気圏グローバルシミュレーションから抽出した環境変動データを入力とすることにより、地球電磁気圏じょう乱を考慮した衛星帯電評価を実現する計画である。
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