研究領域 | 水惑星学の創成 |
研究課題/領域番号 |
18H04456
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
北台 紀夫 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (80625723)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Astrobiology / Origin of life |
研究実績の概要 |
宇宙におけるハビタブルゾーンの特定は該当研究領域の最終目標の一つであるのみならず,自然科学における根源的な課題である.しかしながら,従来の議論では液体の水が存在できるか否か,といった非常に基礎的な条件のみが設定され,その水がもたらす反応場が生体分子の化学進化に有利か否か,についての評価は行われてこなかった.本研究ではこの問いに答える第一歩として,アミノ酸の生成・濃集・重合挙動を様々な水-鉱物共存系において予測できる熱力学パラメーターの導出を行う.ここで利用する実験・理論的手法は汎用性が高く,他の様々な生体分子の反応挙動予測に適用できる.このため本研究は生命の誕生をもたらしうる水惑星環境をエネルギーの観点から特定する新たな方法論の提案に相当する.領域本体の水惑星の形成・進化過程の解明と相まって,宇宙における生命研を制約する新たな指標の確 立をもたらすことができる. 昨年度はアスパラギン酸(Asp)とその2量体(AspAsp)の鉄酸化鉱物(ゲーサイト)への吸着挙動を評価した.様々なpH, NaCl濃度,有機物濃 度,鉱物/水比において吸着実験を行い,得られた結果を表面錯体モデル(ETLM)で解析することで,Asp-ゲー サイト,AspAsp-ゲーサイト組み合わせについての吸着パラメータを獲得した.このパラメータを用いたAspの重合挙動計算では,熱力学的に生成しうるAspAsp濃度がゲーサイトの存在によって約10万倍増加することが予測された.この効果は水質(pHやNaCl濃度)によって大きく変化した.これらの結果は,アミノ酸の重合挙動には鉱物が大きな影響を持ち,水惑星環境における生命の化学進化を評価するためには水と共に鉱物の存在を考慮しなければならないことを示している.この成果は現在,国際誌Astrobiologyに投稿しており,査読・改定を経て現在は再投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,アミノ酸(アスパラギン酸)の鉱物(ゲーサイト)への吸着挙動の実験・理論による評価が進んでいるため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は吸着媒体となる鉱物の種類を変化させ,アミノ酸の吸着や重合挙動にどのような影響があるかを評価していく予定である.アミノ酸の重合化に適した水惑星表層環境を推定する上で重要な基礎データが得られると期待される.
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