研究領域 | 水惑星学の創成 |
研究課題/領域番号 |
18H04457
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
横山 哲也 東京工業大学, 理学院, 教授 (00467028)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 隕石 / モリブデン / 同位体異常 / レイトべニア / TIMS |
研究実績の概要 |
研究初年度はMo同位体分析法の開発を行った。まず、プレソーラー粒子を含む隕石を完全分解する手法の開発を行った。研究代表者はこれまで、隕石を完全分解する手法として、試料にフッ化水素酸・硝酸・硫酸を加え、高圧分解装置(DAB-2)で250 ℃に加熱する手法を開発し、NdやSrの同位体分析に適用してきた。本手法の問題点は、DABの耐圧容器(SUS316Ti)にMoが2~3%程度含まれているため、分解時に試料がMo汚染を受けてしまうことである。そこで、耐圧容器内にセットする試料容器(テフロン製)を二重にすることで、問題解決を試みた。その結果、Mo汚染の程度は軽減されたが、依然数10 ngのMoが混入し、本分解法がMo同位体分析には適さないことが判明した。 一方、TIMSを用いたMo同位体分析法に関しては、従来のStatic法ではなく、検出器の経年劣化をキャンセル可能なDynamic法による測定法を開発した。Dynamic法を適用した結果、Mo同位体比の精度が数倍向上した。例えば95Mo/96Mo比に関し、Static法では繰り返し再現性50 ppm程度であったものが、Dynamic法では12 ppmとなった。これにより、隕石に見られるごくわずかなMo同位体比の変動を検出することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析技術の開発においては、若干の遅れが生じている。これは、試料の分解に高圧分解法が適用できないとの結論に至るまで、数多くの実験を試みたためである。また、連携研究者が一般企業に就職し、研究上の協力が得られなくなったことも遅延の原因の一つである。様々な工夫を凝らしたが、最終的にどうしても容器からのMo混入を防ぐことができなかった。一方、TIMSによるMo同位体分析法に関しては、Dynamic法を用いることにより、予想以上の精度向上を達成することができた。今後、試料分解法の開発がすすめば、隕石の高精度Mo同位体比データを逐次獲得することが可能になる。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年次は、隕石の完全分解法として、アルカリ融解法を適用する。アルカリ融解法では使用する融剤から微量元素が汚染するため、分解した試料のSrやBa同位体分析は不可能となるが、Mo, Ru, REEなどの同位体分析を実施する上では問題ない。同時に、Mo化学分離法の確立を行う。Moの化学分離はイオン交換法により行う。基本的な分離法は既に確立済みだが、隕石の完全分解でアルカリ融剤を用いるため、それらを除去するための新たな分離工程を確立する必要がある。分離には陰イオン交換樹脂を用いる予定である。 一方、隕石試料の分析では炭素質コンドライト、および分化隕石、特に小惑星ベスタ由来のHED隕石の分析を行う。HED隕石はプレソーラー粒子を含まないため、完全分解法を適用する必要はない。なお、連携研究者が不在である点に関しては、Mo同位体分析を研究テーマとする研究室の学生と協力しながら補う。隕石のMo同位体組成を基に、研究計画班と議論を行い、原始地球への小天体の衝突と元素供給プロセス、およびレイトベニア仮説を検証する。
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