揮発性脂肪酸は化学反応や物質循環を解明する上で有力なツールとなるが、分析上の問題から未だデータが限られている。そこで本研究では、ガスクロマトグラフィー(GC)を利用した汎用的な揮発性脂肪酸の分析法を確立することが目的である。また低濃度試料分析を実現させるためには、分析前処理として試料の濃縮を行う必要がある。本年度は真空凍結乾燥法によるギ酸・酢酸水溶液の濃縮評価実験と、GCによる分析条件の検討を行った。 真空凍結乾燥による濃縮実験:ギ酸・酢酸水溶液を作成し、溶液のpHが12.5程度になるようアルカリ剤(KOHまたはCa(OH)2)を添加した。対照実験としてアルカリ剤を添加しない実験系、ブランク実験として超純水のみの実験系を用意した。時間を変えて真空凍結乾燥を行い、試料中のギ酸・酢酸濃度の変化を調べた。乾燥速度(気化した水分量/乾燥時間)は、添加剤や溶液成分によって異なり、特にKOHを添加した系については乾燥速度が速い傾向があり、途中で加速があるためか試料が乾固してしまうケースが多々あった。対照的に、Ca(OH)2を添加した実験系では乾燥速度が遅くなる傾向が見られた。いずれの実験系についても、20倍程度までの濃縮に関しては実測濃度と理論濃度が良く一致しており、大幅な損失なく水溶液中のギ酸および酢酸を理想的に濃縮することができた。ブランク実験の結果、水溶液の作成時に使用する超純水中に~3 μmol/kgのギ酸・酢酸ブランクがあることが分かった。また、ブランクの量について、アルカリ剤添加系と無添加系間で有意な差は認められなかった。 GC分析条件:GCカラムは酸分析用に設計された高極性カラム(DB-FFAP)を使用した。水溶液試料のダイレクト注入(<1 μL)、スプリット比(30:1)、ヘリウムガスキャリアの条件で、ギ酸と酢酸は十分に分離され、良好なピーク形状を得られることを確認した。
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