研究領域 | 次世代物質探索のための離散幾何学 |
研究課題/領域番号 |
18H04471
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松下 ステファン悠 東北大学, 理学研究科, 助教 (90773622)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱電変換 / トポロジカル絶縁体 |
研究実績の概要 |
本研究では、マイカ基板上に3D-TI物質であるBi2-xSbxTe3-ySey(BSTS)結晶の薄膜を作成し、その熱電物性の測定から、3D-TI表面における電子の特異なスピン状態とその熱電物性との相関を実験的に解明し、スピン状態を組み込んだ理論モデル構築への提言を行うことを目的としている。初年度は10nm以下の薄膜における熱電物性の測定から、膜厚減少によって生じる表面ギャップと熱電物性との相関を明らかにする計画であった。これに対し、BSTS薄膜の膜厚を75 nm~5 nmまで細かく変化させ、その熱電物性(電気抵抗、ゼーベック係数)及び磁気輸送特性(ホール抵抗、磁気抵抗)の測定を行った。 熱電物性では、膜厚の減少に伴ってバルク由来の半導体的な温度依存性が弱くなってゆき、膜厚14 nmを境に室温(300 K)から低温(2 K)に至るまでの広い温度領域で表面電子由来の金属的な温度依存性が観測された。14 nm ~5 nmまでの膜厚においては、電気抵抗、ゼーベック係数ともに膜厚に依存しておらず、2次元的な表面電子の特性を反映した結果が得られた。これまでに行った研究から膜厚4 nmで表面にギャップが開いていることは確認しており、今回の結果でギャップが開く前の状態(今回の結果では5 nm以上の膜厚)においては表面電子の熱電特性は一定であることが明らかとなった。また、膜厚4 nmの結果も合わせて全体を比較することで、表面ギャップが生じることによる熱電力の増大も明確となった。 また、ゼーベック係数とホール係数の結果を比較した結果、ゼーベック係数がホール係数に比べてバルク電子に対しての感度が高いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は膜厚減少による表面ギャップと熱電物性との相関を中心に研究計画を立てた。これに対し、膜厚4 nm以上については十分な測定・解析を完了し、論文としても投稿した。残すは4 nm以下の膜厚に対しての測定であり、次年度初頭中には完了する見込みであることから、研究はおおむね順調に進行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、4nm以下の膜厚に対する熱電測定を行い、表面ギャップと熱電物性との相関を明らかにしていく。この際、マイカ基板上のBSTS薄膜の測定に加えて、SiO2基板上でのBSTS薄膜を用いた測定も並行して行う。後者は試料に電極を設置することで、ゲート電圧によるフェルミ準位の調整が可能となる。これによって、より詳細な熱電特性、伝導特性の情報を得ることが可能となる。また、スピン状態の寄与を明らかにするために、磁性体添加膜での測定も合わせて行っていく。
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