離散幾何学解析を含めて数理解析は、次世代の情報処理解析や計測技術として、数理科学、材料科学や物理学の研究分野で大きな貢献が期待されている。一般的に、数理解析を量子科学または材料の“幾何とトポロジー”に応用し、その物性の予測及び実験的に計測は重要な課題である。本研究では、固体物性におけるトポロジーとこれまで発展されてきた数学的概念のリンクとなる実験的な計測法:量子光学の計測法を確立させ、新規物性の発見につながる実応用を目標として、研究を遂行してきた。測定に用いる材料には、トポロジカル物質、二次元材料もしくはそのハイブリッド構造を利用して、素子作製を行ってきた。それらの物質の作製法として、材料自体は、主に単結晶成長や単結晶へき開及びCVD法を用い、電子線リソグラフィー技術を精緻に行うことで素子構造の作製に成功した。また、ベリー曲率の証明に必要なそれら素子を用いた光電流計測技術に関してもほぼ成功しており、更なる研究の推進、例えば、MoTe2やWTe2に注目し、それらにおける光電流効果の観測が可能となる研究環境を整えることもできた。これら材料の結晶非対称性に由来する光電流の成分の特定は、トポロジカルな成分の分離を目指すことが可能となる。実際にMoTe2における光電流効果について結晶対称性に由来する光電流の2成分を観測に成功した。また、その温度変化を系統的に調べ、結晶構造相転移との相関を見極め、バンド構造のトポロジーの光電流成分を分離できる計測方法の開発を行うことも視野に入れている。以上のように、本研究では、トポロジカル物質の実験的な計測法:量子光学の計測法を確立し、光電流が測定材料の結晶非対称性、トポロジーに由来することを実験的に観測することに成功している。
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