公募研究
ガラスのテラヘルツ帯普遍的励起であるボゾンピークや高分子ガラスのテラヘルツ帯励起と考えられるフラクトン励起に関し、テラヘルツ時間領域分光を主とした分光研究を推進している。ボゾンピークに関する基礎的な実験研究と分子動力学計算による知見から、2つの進展が見られた。一つは、ナノアモルファス領域におけるボゾンピークのテラヘルツ分光により、ボゾンピークの波長と考えられる数ナノメートルのアモルファスがあればボゾンピークが存在し、かつテラヘルツ分光で検出可能であることが示唆されている。これにより、ミクロ相分離構造などのナノスケールアモルファスに対するボゾンピーク分光研究の展開がテラヘルツ帯分光によって可能であることが示された。もう一つは、ボゾンピーク周波数の決定要因として水素結合が重要な因子になり得ることが示された。この知見は有機物のボゾンピークを理解する上で欠かせない基礎的な知見になると考えている。一方、フラクタルダイナミクスに関し、非晶質に対する線形応答理論とフラクトンモデルの分散関係を組み合わせることでフラクトン領域の赤外光振動結合定数の表式を見出し、テラヘルツ分光によるフラクトン研究が可能であることの先鞭をつけた。また、パーシステントホモロジーの理論におけるフラクタル次元の定義を用いて、タンパク質の構造に対するパーシステント図からフラクタル次元を決定し、その妥当性について検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
高分子ガラスのボゾンピークとフラクタルダイナミクスに関する分光研究を推進し、その成果を論文にまとめていること、及びそれに関連した国際学会の招待講演が2件、国際学会のポスター賞が1件、日本物理学会若手奨励賞などの受賞2件を得ており、概ね順調に研究の進展と成果が出ていると考えている。また、ナノスケールアモルファス粒子のボゾンピークの存在を分光実験により明らかにしつつあり、今後、ミクロ相分離などの種々のナノスケールアモルファスに対し、テラヘルツ分光が有効である先鞭をつけている。加えて、パーシステントホモロジー理論のフラクタル次元をパーシステント図から抽出することにも成功しており、テラヘルツ帯ダイナミクスの記述子の一つになるかを検証するための基礎知見を得ることに成功した。
フラクタルダイナミクスに関し、フラクトン領域の赤外光振動結合定数の表式に関する論文を出版する。また、パーシステントホモロジーの理論におけるフラクタル次元を種々のタンパク質や高分子ガラスについて調べる。また、ミクロ相分離を見せる高分子ガラスの系に対するテラヘルツ帯分光研究を開始し、ボゾンピークとフラクタルダイナミクスに関する基礎知見を得る予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 20件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
2018 43rd International Conference on Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves (IRMMW-THz)
巻: - ページ: 1-2
https://doi.org/10.1109/IRMMW-THz.2018.8510433
https://doi.org/10.1109/IRMMW-THz.2018.8510157
巻: - ページ: 1
https://doi.org/10.1109/IRMMW-THz.2018.8509881
https://doi.org/10.1109/IRMMW-THz.2018.8510341
https://doi.org/10.1109/IRMMW-THz.2018.8509969
http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~mori_lab/index.html