研究実績の概要 |
炭素同素体であるグラファイト、ダイヤモンド、さらにフラーレン、ナノチューブ、グラフェンといった分子性ナノカーボンは、結合トポロジーの差異によって全く異なる物性を示すことは言うまでもない。このような炭素同素体に対しては、近年、グラフ理論が、sp2炭素からなる炭素の新しい同素体として「K4構造」と呼ばれる3次元キラル構造を提案し、注目を集めている。このような炭素同素体の炭素1個を、トポロジーを保ちながら分子1個に置き換えることができれば、「分子性炭素同素体」とでも呼ぶべき物質群を構築できるだろう。
我々は、π平面の法線ベクトルが3方向を向くプロペラ状分子p-TTに着目し、ラジカルアニオン塩の結晶化を通じて、分子性Honeycomb格子の作製にもごく最近成功している。この系は、p-TTとRb+イオンの3:1塩であり、p-TTはトリラジカルトリアニオン状態にある。バンド計算の結果、Grapheneと同様なDirac Coneが存在し、さらに分散の全くないFlat Bandが含まれることが分かった。今年度なこの起源について検討したところ、TT分子が3回軸をもつ分子であり、これから必然的に生じる分子軌道の縮重からもたらされることが分かった。
さらに本研究では、ハニカム構造をもつ共有結合性有機構造体(COF)を合成し、その空孔で導電性高分子として知られているpoly(3,4-ethylenedioxythiophene) (PEDOT) を重合させて高い電気伝導性を達成した。 これをキャパシタの電極として、硫酸溶液を電解質として蓄電容量を測定したところ、1663 F g-1 (1 A g-1) ~ 998 F g-1 (500 A g-1)と極めて大きな値が得られた。
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