研究領域 | 次世代物質探索のための離散幾何学 |
研究課題/領域番号 |
18H04486
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山口 哲生 九州大学, 工学研究院, 准教授 (20466783)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トポロジー / ネットワーク / 破壊 / ゲル / 応力集中 |
研究実績の概要 |
本研究では,ネットワーク状構造物の力学的強靭化に関する基本原理を獲得することを目標とした.ネットワーク状構造物とは,高分子や棒,シートなどの薄肉弾性体がネットワーク状に連結してできた構造物を指す.高分子ゲル,フォーム,ネット,トラス構造など,身の回りにさまざまな例があり,軽量や物質透過性などのすぐれた特性のため,すでに実用化されているものも多い.しかしながら,疎な弾性体部分が力を支えなくてはならず,力学的脆弱性という致命的欠点をもつ傾向にあり,強靭化への指針の確立が求められてきた.そこで本研究では,新たに,ネットワークトポロジーという視点を導入し,研究を行った.まず手始めに,2次元の規則的なネットワーク状構造である正方格子を出発点とし,系統的にトポロジーに変更を加えた例として,格子点での次数(手の数)が3と5を交互に繰り返す格子,2と6を交互に繰り返す格子をゴムひもと金具を用いて実際に作成し,引っ張って破壊させる実験を行った.その結果,次数の差が2(=5-3),4(=6-2)と大きくなるにつれ,破壊に要する仕事量(破壊エネルギー)が著しく増大することが確認された.また,破壊エネルギー増大のメカニズムを解明するため,数値シミュレーションを行ったところ,トポロジーの違いによって,応力集中の挙動が質的に変化することが分かった.さらに,メカニカルメタマテリアルと呼ばれる構造を作製し,応力集中挙動を観察したところ,通常の構造とは有意に異なる結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネットワークトポロジーによる強靭性の効果については,当初の計画通り,実験・数値計算による検討が進展し,メカニズムに関する有力な手がかりが得られ,さらなる強靭化への指針が得られた.また,メカニカルメタマテリアルを用いた応力集中低減の可能性についても,実験を行った結果,その可能性が示唆される結果が得られた.しかしながら,トポロジカルメカニカルマテリアルの創製やトポロジー自動生成アルゴリズムの構築については,未着手となっており,今後の挽回が必要となっている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗を踏まえて,今年度は以下のような研究を行う予定である. まず,トポロジカルメカニカルマテリアルの創製を試み,構造内部の欠陥に対してどのように振舞うかを実験的に検討する.次に,実験系を2次元から3次元に拡張すべく,設計手法の確立と3Dプリンタを援用した構造創製に挑戦する.その後,破壊実験を行い,構造と強靭性との関係を詳細に調べる. また,実験と並行して,数値シミュレーションにも取り組む.実験との連携を行いつつ,トポロジー自動生成や破壊シミュレーション,内部状態の可視化などの利点を十分に生かすことによって,物理的直感とは相容れないような構造の探索にもトライすることで,最適強靭構造の発見に取り組む. 最終的には,実験での確認も行うことで,強靭化構造の設計指針の確立にたどり着きたい.
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