本研究ではまず,(既存の構造とは異なる)非自明なトポロジーをもつ構造をデザインすることで,脆弱性の原因となる応力集中を制御・低減できるのではないか,という点に着目した.その仮説を実証するため,ネットワークトポロジー(連結構造)の異なる3種類の弾性ネットワーク材料を作製し,材料に伸長変形を与えて破壊させる実験を行った.その結果,トポロジーによって破壊特性が有意に変化することを見出した.この結果は,数値シミュレーションでも再現され,トポロジーを工夫することで,き裂周辺の応力集中を著しく低減できることが示された.また,系のサイズを大きくしたところ,トポロジーの違いによる強靭性の差異がさらに増幅されることが突き止められた. 次に,強靭性の発現のためのもう一つの候補である,メカニカルメタマテリアルに関する検討を行った.メカニカルメタマテリアルとは,内部構造(とくに回転自由度)のデザインによって,自然界には存在しない新規の物性を意図した物質群を指す.本研究では,強靭性を発現するメカニカルメタマテリアルの創生を目指し,いくつかの検討を試みた.その結果,ある構造については,(負の値をとる)ポアソン比の値と材料の強靭性との間に有意な相関があることを発見した.これは,モデル実験によって見いだされ,その後数値計算によって確認された. これらの結果は,疎な弾性ネットワーク状材料において,適切な内部構造のデザインにより,脆弱性が劇的に改善される可能性を強く示唆しており,高分子ゲル,網,多孔質材料,膜など,脆弱性の問題を抱えている広範な材料を強度を改善のためのヒントを提供するものである.
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