研究領域 | 次世代物質探索のための離散幾何学 |
研究課題/領域番号 |
18H04491
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
吉川 浩史 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (60397453)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多孔性炭素 / グラフェン / カーボンナノチューブ / 金属有機構造体 |
研究実績の概要 |
本研究では、ナノ構造の極小曲面や動的構造形成の概念といった幾何学構造に基づいて、多孔質炭素材料の新しい作製法を開発し、構造と電極特性などの物性を完全に制御することを目的とした研究を行った。 まず、三次元構造を有するピラー化グラフェンの創製と形状解析については、様々な比率の単層カーボンナノチューブ(SWNT)とグラフェン(RGO)から成る複合体を作製し、それらの負極特性を検討したところ、SWNTとRGOの比率が2:1のものについてもっとも大きな容量を得ることができた。これは、ピラーとなるSWNTが多いと電解質イオンが挿入されず、少ないと電解質イオンが複合体表面に集積されないためであり、表面積及びその幾何構造と密接に関わっていることが示唆される。 次に、金属有機構造体(MOF)を鋳型とする三次元多孔性炭素の創製と系統化については、interdigitated型およびピラーレイヤー型の2種のMOFを様々な温度で焼成し、酸処理をすることによって炭素材料を得た。これらの負極特性を測定したところ、ピラーレイヤー型MOFを鋳型とした場合には、配位子の種類によっては大きな容量が得られることを見出した。Interdigitated型MOFでは、もともとのMOFに空孔がないために、焼成後に得られた炭素にも空孔がまったく形成されず、電解質イオンがまったく挿入されない結果、容量が得られなかったと思われる。このように、鋳型の構造や表面積などが電極特性に影響を与えることを見出しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、三次元構造を有するピラー化グラフェンの創製と形状解析について、様々な比率のSWNTとRGOからなるピラー化グラフェンを作製し、その電極特性との相関を見出すなど研究はおおむね順調に進行していると言える。 一方で、金属有機構造体(MOF)を鋳型とする三次元多孔性炭素の創製と系統化については、特定の構造を有するMOFを対象に、系統的に炭素の作製とその電極特性を測定しており、研究は計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
三次元構造を有するピラー化グラフェンの創製と形状解析については、SWNT/RGO複合体の電極特性を幾何学的特徴と結び付けて議論し、高性能な電極材料を得るための一般則を見出す。さらに、SWNTの代わりに有機ホウ素架橋分子を用いることで、新しいピラー化グラフェンを創製するとともに、その形状解析を行う予定である。 一方で、金属有機構造体(MOF)を鋳型とする三次元多孔性炭素の創製と系統化については、類似の格子体積、金属イオン、配位子を持つダイアモンド型、ジャイロイド型、立方体型のMOFを探索・合成し、これらを鋳型とする新しい多孔性炭素材料を作製するとともに、その負極やキャパシタ電極特性を計測し、幾何構造がどのように電極特性に影響するかを明らかにして、極小曲面と物性という数学が拓く高性能材料の開発を実現する。
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