研究領域 | 次世代物質探索のための離散幾何学 |
研究課題/領域番号 |
18H04494
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
萩田 克美 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 講師 (80305961)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゴム材料 / ナノ粒子 / シミュレーション / 粗視化MD / FIB-SEM / 小角散乱実験 / 逆モンテカルロ法 / 3次元構造解析 |
研究実績の概要 |
ナノ粒子が充填されたゴム材料で、バウンドラバーやナノ粒子凝集構造の特徴や機能との相関を分子シミュレーションで明らかにするために、粗視化MD解析法の検討を確立させた。これは本研究で用いる教師データの質を高めることに対応する。延伸下のゴム中ナノ粒子の構造に関する2次元散乱パターンの挙動と、分子レベルでの挙動を結びつける検討を行い、7本の論文を出版した。 ゴム材料中の充填剤のシリカナノ粒子の体積分率を系統的に変えたサンプル(4%, 8%, 12%, 16%, 20%, 24%)を作成し、NIMS微細構造プラットフォームのFIB-SEMを用いた3次元ナノ構造の計測や、SPring-8のBL19B2, BL08B2, BL24XUを用いた小角散乱データの観察を行った。開始当初に、ゴム中ナノ粒子の3次元構造を2nmの高解像度でFIB-SEM計測する手法を確立させるとともに、切削方向のディープラーニング超解像化の可能性を検討し論文出版した。また、3次元構造をVR観察する技術の検討を行い、論文出版した。 粗視化MDをさらに簡素化したFN-toy モデルにおいて、ボンド切断を考慮した模型の検討を行った。粗視化MDを教師データとして、FN-toyモデルへの学習・フィッティングを改良し、構造の数学的特徴と物性値の相関をAI(機械学習・ディープラーニング)で見いだす作業を進めている。 新たに取得した散乱スペクトルに対する逆モンテカルロ(RMC)解析で「京」コンピュータの有償利用し、約3千万粒子の大規模系の途中結果を迅速に得た。現在、RMC解析の継続と詳細な解析を進めている。 延伸中の異方的な2次元散乱パターンからナノ粒子配置を逆問題推定する2次元散乱パターンRMC法について、3D-FFTを用いて散乱を計算する新しい計算法のコードを開発し、ゲル中のナノ粒子で実証検証を実施した。この成果は、論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ粒子が充填されたゴム材料に関して、バウンドラバー/ナノ粒子のネットワーク構造の数学的特徴付けと機能との相関解明を検討するためのシミュレーション研究を順調に進めた。特に、数学的特徴と物性推定値との広範な相関を、構造と応力のデータから、AI(機械学習・ディープラーニング)的判別の可能性検討のために、シミュレーションデータを取得した。簡易粗視化模型のFN-toy モデルは、延伸過程の2次元散乱パターンを再現するようにパラメータを設定するため、教師データとなる粗視化MD法による研究を進めた。また、高分子ネットワークの特徴が2次元散乱パターンの挙動に大きく影響を与えることを新たに明らかにした。高分子ネットワークが、グラフとしてはパーコレーションしていないが、entanglementにより力を伝える状態では、パターンの変化が顕著になった。高分子ネットワークの特徴付けについて、領域内の研究者と議論を行い、関連する研究の発展を検討した。 ゴム材料中の充填剤のシリカナノ粒子の体積分率を系統的に変えたサンプル(4%, 8%, 12%, 16%, 20%, 24%)を作成し、NIMS微細構造プラットフォームのFIB-SEMを用いた3次元ナノ構造の計測や、SPring-8のBL19B2, BL08B2, BL24XUを用いた小角散乱データの取得を概ね順調(一部が未実施)に進めた。BL19B2の小角データに対する52万粒子系のRMC解析は実施した。BL24XUの極小角データに対する400万粒子系の解析を順調に進めた。並行して、比較確認のために、すでに出版した論文と同じ3000万粒子の大規模系の解析を京コンピュータを実施し、迅速に途中経過を得た。 ゴム中ナノ粒子の3次元凝集構造を直感的に把握するため、没入型VR観察の環境を整備し、研究協力者や領域内研究者および講演を通じての一般への理解周知を行った。
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今後の研究の推進方策 |
フィラー充填ゴム材料系の粗視化MDシミュレーションで得た2次元散乱パターンに対するAI的解析や、FN-toyモデルによる大量データでの解析について、引き続き検討を進める。また、ABAブロックコポリマーの粗視化MDによる相分離構造の形成や変形に対する2次元散乱パターン挙動に関する研究も、フィラーが作る相対的に硬い構造体の挙動解析と関係することから、並行して進める。さらに、ボイド形成などの破壊挙動については、2次元散乱パターン挙動が実験とシミュレーションの対応関係を明らかにできたことから、高分子とナノ粒子の間の相互作用の影響を詳細に検討するため、物性値の再現精度が高いユナイテッドアトム模型 TraPPE-UA や反応力場 ReaxFF を用いた高分子材料系のシミュレーション研究も進める予定である。これらのデータの特徴について、機械学習やディープラーニングなどのAI的解析での分析を進め、構造の数学的特徴と物性の相関を解明し、材料物性の予測などを実現させる。 本研究課題で作成したゴム材料のナノ構造観察については、一部未実施であったFIB-SEM観察やSPring-8 BL24XUの極小角散乱データの取得を引き続き進める。FIB-SEMで取得したナノ粒子の凝集構造についての数学的特徴付けについての分析を引き続き進める。極小角散乱データのRMC解析については、解析対象とする系の規模の見極めを行い、解析を完了させる。FIB-SEMの3次元構造に対する解析の知見を基にして、RMC解析で得た単分散ナノ粒子の3次元凝集構造の特徴分析を行う。延伸させたゴム中のナノ粒子の2次元散乱パターン挙動に対するRMC解析を、論文投稿中のPM-2DpRMCコードで実施し、特徴的な挙動を明らかにする。加えて、PM-2DpRMCコードについて、研究協力者等も利用できるようにしてコード公開の準備を進める。
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