公募研究
本研究では、cDNA display 法が持つ分子夾雑環境下での淘汰に対するポテンシャルに着目し、標的分子を夾雑環境下において非固定化条件下で認識するペプチドアプタマーの進化的取得方法の開発を目指している。中でも今年度は光架橋核酸を含むDNA タグを開発し、UV 照射により標的タンパク質とcDNA display 分子との相互作用を夾雑環境下で共有結合として捕捉する手法について検討した。まず、本研究の要である光架橋DNA タグを設計合成した。このDNA タグはa) 標的タンパク質を化学修飾するための反応基(NHS 基、maleimide 基、自殺基質など)を含む配列、b) 光架橋塩基を含む配列、c) 光反応後に標的タンパク質をプルダウンするための官能基(biotin、click chemistry 用官能基など)を含む配列、の3 つから構成される。一方、リガンド・標的タンパク質相互作用特異的な光架橋を達成するには、cDNA display 側のpuromycin linker にも工夫が必要であるため、上記DNA タグの配列のb)部分と適切な親和性でハイブリダイズする塩基配列を、逆転写プライマー領域とcDNA display 分子精製用配列との間に挿入したものを作製した。続いて、モデルペプチドリガンドを用いて相互作用依存的な光架橋反応が起こる条件を探った。具体的には、既に報告があるstreptavidinに結合するペプチドリガンドSBPのcDNA display 分子を常法によって作製し、DNA タグで標識した標的分子と混合して光照射を行った。その後サンプルをSDS-PAGE で分析したところ、適切な条件下では光照射依存的にバンドのup-shift が見られ、SBPと競合するビオチンの添加によりシフトが抑制された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の通り、光架橋核酸を含むDNA タグの設計と合成を行い、UV 照射により標的タンパク質とcDNA display 分子との相互作用を夾雑環境下で共有結合として捕捉する手法について検討を行うことができた。また、いくつかの条件検討の結果、効率に課題はあるものの、光照射によってcDNA display分子とそれに対応する標的タンパク質とを共有結合で結びつけることに成功した。
今年度用いたstreptavidinは4量体であるため、様々な化学量論でペプチドと結合して結果の解釈が複雑であった。そこで上述のstreptavidin-SBPのモデル系以外のペプチドアプタマー・標的タンパク質の組合せでもUV照射による共有結合化が起こるのか確認する。また、本研究のもう1つの課題である「cDNA displayを用いた分子夾雑系中での淘汰実験」に取り組む。具体的には、ランダム配列をコードするcDNA displayライブラリを調製し、コンフォメーションを固定するため化学架橋もしくはジスルフィド結合により環化させる。これを精製した後、標的タンパク質と反応させて親和性のある分子を選択する。セレクションの際はサンプルを2つに分け、通常の緩衝液だけでなく血清を添加した環境でも結合実験を行う。これを何度か繰り返し、「緩衝液セレクション」と「血清セレクション」の夫々に対して次世代シークエンスにより配列解析を実施する。そして、両者の間でS/N(=非特異結合の程度)や淘汰のスピード、得られる配列に違いがあるかを検証する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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http://park.saitama-u.ac.jp/~nemoto/