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2018 年度 実績報告書

細胞膜タンパク質機能を制御する人工光応答分子の開発

公募研究

研究領域分子夾雑の生命化学
研究課題/領域番号 18H04537
研究機関東京大学

研究代表者

小澤 岳昌  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40302806)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード光操作 / アップコンバージョン / GPCR / CRY2
研究実績の概要

細胞膜タンパク質受容体であるADRB2について,青色光依存的なタンパク質間相互作用誘起システムCRY2/CIBNを利用し,細胞内タンパク質Arrestinとの相互作用を誘導することでエンドサイトーシスが誘起されることを実証した.さらに本原理を他のGPCRや1回膜貫通型タンパク質に適用可能であるかどうかを検証した.その結果,エンドサイトーシスを光誘起可能なグループ(A)とそうでないグループ(B)が存在することを発見した.グループAに属するバソプレシンV2受容体 (V2R) は,細胞質側に位置するC末端側領域のペプチド断片 (V2RCT) のみでも細胞内で安定発現し,Arrestinとの相互作用を光誘導することでエンドサイトーシスが誘起されることが確認された.さらに,V2RCTはエンドソーム形成後にリソソームへと移行し,分解されることが判明した.そこで,ペプチド断片V2RCTを他のGPCR (ADRA2A, mGluR1a) に付加した融合タンパク質を作成した.光照射によりArrestin-CRYとの相互作用を誘導したところ,多くの融合膜タンパク質がエンドサイトーシスされる様子が観察された.特にADRA2Aは本来エンドサイトーシスが光誘起されないグループBに属するGPCRであり,付加したペプチド断片V2RCTによってエンドサイトーシスが誘導されたことが判明した.平行してランタニドナノ粒子(LNP)の光操作を培養細胞を用いて検討した.アップコンバージョン粒子を含むコラーゲン基板上で光制御システムを導入し,近赤外光レーザー (976 nm, CW) を照射し,青色光駆動光制御システムの駆動を検証した.近赤外光照射にともない,紫外光照射と同様のArrestinの膜以降とエンドサイトーシスが確認されたことから,LNPを用いることでCRY2の近赤外光操作が可能であることが解った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請時に予定していた(I)膜レセプターの活性をアップコンバージョンナノ粒子(LNP)により制御する技術については,概ね予定通りの成果を得ることに成功している.特に光操作タンパク質であるCRY2が,LNPの近赤外光照射により動作することが培養細胞レベルで確認することができた.この成果を基に,LNPを用いたCRY2の光操作が,既存の光操作ツールを含め可能となり,今後の大きな展開が期待できる成果である.課題(II)細胞膜レセプターのリサイクリング(エンドサイトーシスとエクソサイトーシス)を近赤外光により操作する技術では,バソプレシンV2受容体 (V2R)の細胞質側に位置するC末端側領域のペプチド断片 (V2RCT)を,標的レセプターに連結することで,そのリサイクリングが青色光照射により可能であることを実証することができた.さらにLNPを分散させた培養ディッシュでは,近赤外光照射によりレセプターのリサイクリングを誘導することが可能となった.以上より研究はおおむね順調に進展している.

今後の研究の推進方策

課題(I)膜レセプターの活性をアップコンバージョンナノ粒子(LNP)により制御する技術については,LNPの表面修飾を行い,肝臓や脳への組織ターゲッティングを行う.また,LNP表面にLOV2を連結した粒子を作製し,光照射に伴う膜レセプターの凝集を実行可能にする.課題(II)細胞膜レセプターのリサイクリング(エンドサイトーシスとエクソサイトーシス)を近赤外光により操作する技術では,標的タンパク質となるEGFRのRepebodyをリアクティブタグで連結した架橋分子を作製する.そして,リサイクリング可能な膜タンパク質にリアクティブタグを反応させて,EGFRを細胞外から架橋できることを実証する.ここで細胞外から青色光照射した時,実際にEGFRがリサイクリング分子とともに,エンドサイトーシスが起こるかどうかを検証する.上手く動作しないときは,細胞膜上のリサイクリングタンパク質の発現量,光の照射タイミング,架橋反応などの条件検討を行い,効率よく内在性のEGFRがリサイクリングされることを立証する.

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 9件、 招待講演 12件)

  • [国際共同研究] 南洋理工大学(シンガポール)

    • 国名
      シンガポール
    • 外国機関名
      南洋理工大学
  • [雑誌論文] Unique Roles of β-Arrestin in GPCR Trafficking Revealed by Photoinducible Dimerizers2018

    • 著者名/発表者名
      Takenouchi Osamu、Yoshimura Hideaki、Ozawa Takeaki
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 8 ページ: 677

    • DOI

      10.1038/s41598-017-19130-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Protein-based luminescent sensors for single cell analysis.2018

    • 著者名/発表者名
      T. Ozawa
    • 学会等名
      JSPS-NTS Bilateral Symposium on Functional Materials Chemistry
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 光で生体分子を操作し観察する新たな細胞解析技術2018

    • 著者名/発表者名
      小澤岳昌
    • 学会等名
      日本分光学会年次講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] Opto-bioanalysis: Imaging and controlling GPCR activities in living cells.2018

    • 著者名/発表者名
      T. Ozawa
    • 学会等名
      IUBMB
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 生細胞内GPCR動態の可視化と制御2018

    • 著者名/発表者名
      小澤岳昌
    • 学会等名
      生理研研究会
  • [学会発表] Imaging and Controlling GPCR activities in live cells.2018

    • 著者名/発表者名
      T. Ozawa
    • 学会等名
      The 5th Asian Chemical Biology Conference
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 光でタンパク質を操作し観察する細胞解析技術―オプトバイオアナリシス―2018

    • 著者名/発表者名
      小澤岳昌
    • 学会等名
      日本分析化学会第67年会
    • 招待講演
  • [学会発表] Imaging and Controlling Protein Activities in Living Cells: Opto-bioanalysis.2018

    • 著者名/発表者名
      T. Ozawa
    • 学会等名
      6th UT-UDS Joint Symposium on “Symmetry and Asymmetry in Science”
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Imaging and Manipulating Intracellular signals in Single Live Cells with External Light.2018

    • 著者名/発表者名
      T. Ozawa
    • 学会等名
      the 10th International Forum on Post-Genomic Technology (IFPT’10) and the 11th International Workshop on Approaches to Single-Cell Analysis
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Novel Design of Luminescent Sensors and Optical Switches for Single Cell Analysis.2018

    • 著者名/発表者名
      T. Ozawa
    • 学会等名
      4th International Symposium on Molecular Imaging and Nanomedicine
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Novel Optical Techniques to Explore the Functions of G Protein-coupled Receptors (GPCRs).2018

    • 著者名/発表者名
      T. Ozawa
    • 学会等名
      5th International Conference on Innovative Biology Medicine and Engineering
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Novel design of luminescent sensors and optical switches for cellular analysis-Opto-bioanalysis-2018

    • 著者名/発表者名
      T. Ozawa
    • 学会等名
      Hwasun Optical & Molecular Imaging Workshop and Symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Imaging and Manipulating GPCRs in Live Cells with External Light2018

    • 著者名/発表者名
      T. Ozawa
    • 学会等名
      10th Singapore International Chemistry Conference (SICC10)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 生命の神秘を光で探る―オプトバイオアナリシス―2018

    • 著者名/発表者名
      小澤岳昌
    • 学会等名
      東京大学理学部公開講演会
    • 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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